極楽ハニー【ars K.N】 (ページ28)

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28.カ・ン・パ・イ。ページ28

分かってるよ？

ニノミヤの言った「好きです」が、別に私を好きって訳じゃなくって「その心意気が好き」的な『好き』だってコト位。

ほら、さっきの「『赤鼻のトナカイ』が好き」と多分ほとんど同じ、好き。

だけど、好きな相手の口から真っ直ぐ出て来る「好き」は心臓に凄く負担が掛かる。

息苦しいし、胸いっぱいだし...

ケーキが喉を通らない。

「腹減ってない？オレ、何も食って無くてさぁ...匂いに釣られたわー」

ニノミヤが次に出したのは、おでん。

それと、おにぎり４つ。

「...クリスマスにしては、和風だね」
「日本人だもん。あ、そうそう！でもこんなのはあるよ！」

ニーッと得意気な顔をしたニノミヤの手には、シャンメリー。

「仕事中だから、さすがに本物は無理でしょ？けど、気分ね！気分！」

コップコップ...と立ち上がり、部屋の端にあるウォーターサーバー横に備え付けられてる紙コップを持って

「これでも良い？」

って、私を振り返る。

「うん、何でも良いよ」
「ま、飲んだら一緒だもんな」

素っ気ない真っ白な紙コップに、アルコールなんて1ミリも入ってないシャンパンの偽物を注いで

だけど、私は綺麗なグラスに入った高価なシャンパンを一人で飲むより

ずっとずっと、酔ってしまいそう...。

「ほい、乾杯」
「乾杯...」

ポスッと、弱々しい間抜けな音がする。

その音に、プッと二人で吹き出してしまう。

「乾杯っつったら、チーン！って音が欲しいよなぁ」

ニノミヤがおにぎりのフィルムをペリペリ捲って、パクッとかぶりつく。

「センパイも好きなの選んで良いよ」
「ありがと...じゃあ、鮭にしよっかなー...」

おにぎりを一つ選んで手に取った時、自分の腕時計が目に入った。

「...あっ！こんなノンビリしてたらダメだ！終電逃しちゃう！仕事しなきゃ！」

何を私、ウットリまったりしちゃってんの！

タクシーで帰るとか、あり得ないから！

ここからいくらかかんの！？
そんな贅沢した事無いから、わかんないって！

「いーじゃん、もう」
「はぁ？何言ってんの！？無理無理！タクシー無理！」
「タクシーなんて乗らなくて、良いってば」
「だから、終電には乗りたいって言っ...」

必死で言ってる私を、ニノミヤは首を摩りながら緩く見てる。

「...何よ...」

そんな顔で見ないでよ...

ドキドキするんだってば...

「オレんち、泊まれば良いんじゃない？」

腹が立つ程、綺麗な口元が

確かに、そう言った。