極楽ハニー【ars K.N】 (ページ27)

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27.蝋燭。ページ27

蝋燭を点けるなら一瞬電気消そう、ってニノミヤがさっきつけたばっかの電気を消した。

仄暗い中で、ゆらゆら揺れる蝋燭。

「センパイ、フーして良いよ」
「えー...ニノミヤがしなよ」
「じゃ、一緒に消す？」

向かい合って座ってるニノミヤが、上半身を前に乗り出してテーブルの上の小さなケーキに顔を寄せた。

揺れる蝋燭の炎に照らされた顔が、透き通るような目が、綺麗。

その目が、上目遣いに私を見る。

体勢が低いから上目遣いになってるのは分かってるのに、その破壊力がちょっと異常。

「早くセンパイも来てよ。ずっと火の前に顔出してるの、あちぃわ」
「えっ！？...けど...」
「はーやーくー」

ニノミヤに急かされて、私も同じようにケーキに顔を寄せる。

当たり前だけど、そうするとニノミヤの顔も間近になって思わず目を伏せてケーキの上のサンタさんを凝視してしまう。

「せーの、で消すよ？」
「...うん」
「はい、せーの」

二人でフゥ...と息を蝋燭に吹きかける。

一瞬で、周りがまた暗くなった。

前髪に、ニノミヤの前髪が触れてる。

ドキドキが、自分の耳に聴こえて来て

これって、ニノミヤには聴こえてない？
聴こえちゃってる？

...って、心配になって

「で...電気！点けて来る！」

なんて、私は席を立ってパチパチと電気を点けた。

「センパイさぁ」
「...何？」

席に戻った私に、ニノミヤがボソっと呟く。

「そんなに、このサンタ食いたい？」
「は？」
「だってさっき、すっげぇ見てたじゃん。サンタ。ちょー狙ってる！って思ったんだけど」
「えっ！？いや...そーゆーワケじゃ...」

ケーキの上のサンタさんを指でチョンっと突くと、ニノミヤは「サンタやるよ！」って笑った。

「サンタだけじゃなくって、それ全部食って良いよ」
「...え？でも、ニノミヤは？」
「オレ、あんまケーキ好きじゃないのよ」

あ...そうだ...

前にそんなコト、女の子に言ってた。

「じゃあ、何で買って来たの？」
「え？売れ残ってて可哀想だし」

まぁ25日のこんな時間だもんね。
残っちゃうか。

「...ってのは、ウソ」
「え？」
「センパイ頑張ってたから」
「...え？」
「他人の為に頑張れるヒトは好きです」

ニノミヤがニヤリ、と笑う。

「だからオレからのクリスマスプレゼント」

そんなコト、サラっと言わないで。

「コンビニケーキで悪いけどさ」
「...ううん...」
「食って食って」
「うん...」

...胸いっぱいで食べれないって...バカ。