極楽ハニー【ars K.N】 (ページ26)

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26.思い出すヒト。ページ26

「何...って、クリスマスケーキだけど？」

見て分かんない？って、ニノミヤが首を傾げる。

分かるよ、分かる。

生クリームとイチゴのオーソドックスな二人用程度の小さなホールケーキ。

その上に、砂糖でできたサンタさん乗っかってるもん。
どっからどう見ても、クリスマスケーキ。

だけど、そんなモンが出て来ると思ってなかったんだもん。

今日がクリスマスだなんて事、忘れちゃいたい位だったのに

今は、クリスマス当日にニノミヤがクリスマスケーキを持って私の前に立ってるって事が嘘みたいで

...上手く言葉が見付からない。

「あっちで食おうよ」

ニノミヤが指差したのは、オフィスの端っこにあるちょっとした応接スペース。

ケーキを片手に持って、もう片方の手にはまだ何かいっぱい入ってそうなコンビニ袋を提げてそっちに向かう後ろ姿を慌てて追いかける。

「センパイ、こっち側の電気つけて来てよ」
「あ...あ、うん..」

言われて、消されてた電気の一部を点けてすっかりソファに座って寛いでるニノミヤの正面に私も腰を下ろした。

「やっぱねぇ、クリスマスってったら鶏でしょー？」

そう言って彼が袋から出して来たのは、焼き鳥。

「今さぁ、コンビニってマジ何でも売ってるよね。レジ横に焼き鳥だよ！？買うってなぁ」
「...フライドチキンじゃない？クリスマスの鶏は」

フライドチキンだってレジ横に売ってるよ？
え？見えなかった？

「クリスマスって、本来は七面鳥だよ？鶏食ってるのなんて日本だけなんだから、もうフライドチキンでも焼き鳥でも一緒一緒！間違えてるのは一緒！」

ニノミヤはケラケラ笑うと「フライドチキンとか唐揚げ見ると、思い出しちゃう奴がいんだよねぇ。うるせぇ奴だから思い出したくないの」って面倒臭そうに、でもちょっと嬉しそうに話す。

「あ！24日にずっとあった予定ってソイツの誕生日なのよ」
「え...？」

それは、大切な...人？

「腐れ縁って言うの？高校生の頃からの付き合いでさぁ」
「...そ...なんだ」
「今年はオンナノコと過ごすんだー！とか言い出して。ンフフ、オレらがフラれた」
「え？」
「え？」

女の子と過ごすって事は...それって、男の子って事？
男友達って事？

そっか...そっか！男の子か！

「ん？センパイ、何ニヤニヤしてんの？そんなにケーキ食いたい？」
「へっ！？あっ...え...」
「店員さんがローソクくれたから、立てたげよっか」

ニノミヤが、サクサクとケーキに蝋燭を立てた。