極楽ハニー【ars K.N】 (ページ14)

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14.少女漫画。ページ14

窮地を助けられて恋に堕ちちゃうなんてベッタベタな少女漫画みたいで、嫌になる。

王子様を待ち続けてるお姫様じゃないんだから...

まぁ...ニノミヤは白馬に乗った王子様じゃないけど。

空飛ぶ絨毯に乗りたがってる純日本人だけど。

どんな顔をしてニノミヤに会えば良いのか分からないまんま、翌日会社へ行くとニノミヤはもう既に席に座りパソコン画面に顔を近付けカタカタとキーボードを叩いていた。

若い女子社員がそんなニノミヤに「二宮さん、目が悪くなっちゃいますよぉ？」って甘ったるい声で話しかける。

「ブルーベリーが目に良いんだっけ？ブルーベリーなんて食わねぇよなぁ、普通」
「えー？ブルーベリータルトとか食べません？あっ！美味しいケーキ屋さんあるんで今度行きましょうよ！」
「良いけどオレ、ケーキあんま好きじゃないからコーヒー飲んでても良い？」
「それブルーベリー関係無いじゃないですかぁ！」

ニノミヤの肩に手を乗せながら楽しそうに笑う女の子に、今までは感じなかった感情を持ってしまう自分が嫌だ。

そもそも、こんな風景は今までだって何度も見てたじゃない。

いつだってニノミヤは誰とだって軽く喋ってたし、女の子にも分かりやすくモテてる。

「ケーキ何で嫌いなんですかぁ？」「嫌いってか...何か空気食ってるみたいじゃね？」なんて話してる二人の後ろのデスクに座り、鞄を下ろした。

「おはよ、センパイ」
「えっ！？」
「え？」
「あ、あぁ、うん。おはよ...」

後ろ向きのまんま椅子でツイーっと滑って来たニノミヤに挨拶されただけで、胸がドックン！って大きな音を立てる。

思い出してしまう。

『危なっかしいな...』って言った、あの目

頬を滑る指の感触

「あのさぁ...センパイ」
「...何...よ」

チラリと横目で視線を送られ、またドクンと鳴る胸。

「これ、急ぎで10部コピーして会議室に持って来てくんない？オレ、今からちょっとやんなきゃダメなコトあってさぁ。ごめんなんだけど」
「...は？」
「わーかってるって！後でコーヒー奢るじゃん！あ、煙草の方が良い？」
「...いいよ、そんなのいらないよ。仕事なんだから」

サンキュ！って笑うと、ニノミヤは私のデスクに手に持ってた原稿を置いてどこかへ行ってしまった。

結局

変に意識しちゃってるのは、私だけでニノミヤは何も変わってない。

その現実にホっとしたのか、悲しいのか

何だか分かんないけど、私はコピー機に向かいながら溜息吐いた。