極楽ハニー【ars K.N】 (ページ12)

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12.策略。ページ12

走る車の中で「ニノミヤ...私のコト、馬鹿だなって思ってるでしょ...」って呟くと「うん、思ってる」って返された。

「でもオレのせいかな、とも思った」
「...え？」
「ほら、オレさ『女の武器使え』とか言っちゃったでしょ？...もしかして、そのせいかなって」
「...そうだよ...パンプスだって武器だなんて...」

恨めしい気持ちで、後部座席に置いてるパンプスを振り返る。

「あー...違うよ？色仕掛けしろってワケじゃねぇよ。当たり前でしょ」
「じゃあ、何だったの...」
「あんなしんどそうなモン履いて、脚痛くても平気で涼しい顔してる根性ってすげぇなっていっつも思うのよ。オンナノコ見てると」

信号が赤になり、ニノミヤはハンドルに両手を乗せてその上に顔を置いてこっちを見た。

「その根性があれば何だって出来そうじゃん！って、オレ思うよ。オトコよりずっと格好良い」

それにさぁ、背だってかなりおっきくなるでしょー？って子供みたいにブツブツ言う。

「オレだって履きたいわ！180センチとかなってみたいわ！」
「ニノミヤが180...」
「あんだよ」
「...気持ち悪い」
「失礼！助けてやったのに！！ちょー失礼！！」

ケラケラ笑ったニノミヤに、「ホントにありがとう」って言うと、ポン、と頭に手を乗せられた。

トクン...

「オンナノコなんだから、オトコをもっと頼れよ」

トクン、胸が鳴る。

「まぁ、今回のはちょっとセンパイに謝んなきゃなんないけど...」
「え？」

私の頭に手を乗せたまんま「実はさ...」ってニノミヤはちょっと神妙に話す。

「仕組んだんだよねぇ...奥さんが来るように」
「はっ！？」
「でー、先生のピンチを助けて恩を着せたらまたうちで書いてくれるかなー...って」

ニノミヤが言うには、私がタクシーで出した先生と会う日程と場所を書いたあのメモを盗み見て覚えて

奥さんのお友達の女性作家にあのホテルの食事券(日付指定)を担当編集者に渡すように頼んで、その時に「是非、喜多川先生の奥様と」ってのも伝えて貰って

私と先生が会う日に、ホテルに奥様もやって来るように仕向けたと...。

「でもレストランに来たセンパイがどっか行っちゃったのは焦ったけど」
「ニノミヤ...アンタいつから見てたの？ってか、いつからホテルに居たの！？」
「センパイが来る、３０分前位から張ってた」

信号が青に変わり、「頭は使いようだよねー！オレ、ホント悪知恵働くわぁ」ってニノミヤはまた車を走らせた。