極楽ハニー【ars K.N】 (ページ2)

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2.晴天の霹靂。ページ2

すぐにアイツの噂が耳に入って来たのは、きっと私の居る場所が女ばっかりだからなんだと思う。

『二宮』は誰でも知ってる有名大学を出てて、書籍の編集に配属されてるなんて簡単なパーソナルデータはあっという間に私の耳にも届いた。

それ所か、一ヶ月も経てば「女に不自由してないらしい」だの「テクニシャンらしい」だの...誰がそれを確認したのよって噂まで浮き上がって来る。

そんな話を楽しそうに話す同僚の女の子達の口からは「二宮くん、格好良い」って言葉が口癖のように飛び出て来て

私は逆に「あーゆー男は、質悪いんだろうなぁ...」って思いながらも、その言葉達に「そうだねぇ」なんて調子良く合わせてた。

どうせ、所属部署が書籍と女性ファッション誌ではアイツと関わり合うことも絶対に無いし

だけど、「仕事が出来る」って噂だけはちょっと気にはなったりもして

でもやっぱ、どうせ関わり合いの無い人。

生意気そうな年下の、男。

そう、思ってたついこないだまでの私。

「そうか...人はこれを『晴天の霹靂』って言うのか...」

社会人になって何度目かの桜が咲く季節

私は突然、書籍編集に異動が決まった。

「...無理だってば...」

エディターだなんて、何だか気取った肩書が付いてても会社に勤めてる限り結局はサラリーマンなんだよねぇ...

上からの命令は、絶対だ。

不安でいっぱいの胸を抱いて、今まで北館だったオフィスから南館の書籍編集のオフィスにダンボールに詰めた荷物も物理的に抱えて向かう。

その途中であのオシャレぶった渡り廊下を歩くと、ガラスの壁から入って来る朝陽が眩しい。

オシャレなんだか何なんだか知らないけど、全面ガラスって朝も夕方も眩しいし夏は直射日光が燦々と射し込んであっついだけだっての。

「重そうですね」

窓に向かって心の中で悪態ついてたら、背中から声を掛けられた。

「手伝いましょうか？」
「あ、いえお構い無...く...」
「そ？遠慮しなくって良いのに」

振り返ると、そこに立ってたのは初めて会った頃と同じように白い肌だけど髪は自然な黒髪になり、あの頃にはしてなかったシルバーフレームの眼鏡を掛けたアイツだった。

「...ニノミヤ...」
「あ、名前覚えててくれたんですか？」
「え？」
「ボクが新人の頃、ここで会ったでしょ？」

そう言って、私が抱えてたダンボールをヒョイっと持ち上げるとニノミヤは「これ、どこに持ってくのー？」って

勝手に歩き出した。