空想男子アディクション【ars】 (ページ5)

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■王子の定義【M】ページ5

彼は『王子様』だ。

思えば幼稚園の頃から、商店街のアイドルだった。

ちょっと歩けば「潤ちゃん！お菓子あげよう！」「潤ちゃん！今日も可愛いねぇ」って、声を掛けられる子供。

小学校に入ったら、花屋の息子って事で男子達から「オトコ女ー！」なんて理不尽な悪口でからかわれたりしてたけど、潤は平気な顔で毎朝廃棄になりそうになってた花を学校に持って来ては教室に飾ってた。

持って来た花を自分で花瓶に活けて、その花弁に顔を近付け目を閉じてクンクンと香りを楽しんでる姿は、他のクラスの女子まで見に来てた。

中学に入ったら、同級生だけじゃなくって上級生の女子までが潤に夢中になった。

花束を持って学校に来る潤は、ただでさえ目を引く容姿なのに更に彼を目立たせてどんどん彼は学校の『王子様』になって行く。

それと並行するように、私は潤と一緒に居るのが辛くなったんだ。

ほぼ半年違いで同じ商店街で産まれて、ずっとずっと一緒に居た。

『松本潤の幼馴染み』ってゆー立場は、たくさんの女子に羨ましがられたけど

そんなにこの立場が欲しいなら、いつだって譲りたい。

私は、幼馴染みじゃ無い状態で潤に出会いたかった。

普通に潤に恋をしたかった。

子供の頃から一緒に居る私が、恋愛対象として見て貰えるはずが無い。
潤が私にそんな感情を持つはずが無い。

『王子様』な潤を、もう見たくなかった私は自転車で通える女子校への進学を決めて

潤は、電車で何駅か離れた進学校へ入学した。

良かった、同じ学校に行きたいって頑張って勉強したってどうせあの学校に私は行けなかったはず。
それにもう潤の話題も聞かなくて済む。

そう思ってたのに。

潤の噂は、私の学校にもすぐ届いた。

結局どこに居ても潤は王子様で、手が届かない人だって思い知らされる。

いつだって、触れる事ができるのに。
いつだって、触れて貰えるのに。

貴方はきっと、私の一番近くに居る一番遠い存在のヒト。

そう、ずっと思ってた。

だからね、潤。

私、本当にビックリしたんだよ。

潤に「お前が俺と幼馴染以上になって良いって思ってるんなら、俺はそうなりたいけど」って言われた時。

世界が、一瞬でキラキラしたの。

駆け落ちの真似事をしたあの日に見た、朝焼けの色を

私は一生、忘れないよ。

忘れられないよ。