空想男子アディクション【ars】 (ページ36)

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■WARNING!【A】ページ36

目の前で気持ち良さそうに寝てる彼を見てると、私まで眠たくなるのはいつもの事。

床でゴロンと寝返りをうった彼の髪が、サラリと動いた。

真っ直ぐな髪は何の引っ掛かりも無くて触り心地が良いから

こうやって彼だけが寝てる時に、私はコッソリその髪を撫でている。

彼の頭をツルンと滑る自分の掌。

二度、三度と掌を滑らすと彼が「んー...」と小さく唸ってゴロンとまた寝返り.....をうったら

ゴツン

「いっ...て！！」

彼はローテーブルの脚に頭をぶつけた。

その振動でテーブルの上にあったメラミンのコップが倒れてコロコロ転がり

頭を抱えてる彼の、その頭の上にポコンと落ちた。

「いぃってぇ！！いぃー...」
「わー、痛かったよね今の。大丈夫？」
「痛かったのに、また痛いー...」

ひー...って顔をクシャっと顰めながら、彼、雅紀くんが起き上がって体育座りを崩したような姿勢で座る。

「よしよし」

さっきコッソリ撫でてた頭を、今度は正面から堂々と撫でた。

「タンコブ、出来てない？」
「んー...大丈夫そうだよ」
「目の前に花火が出たよ、パーン！って。すっげぇ怖い。痛い」
「コップ、片付けとけば良かったね。ごめんね？」
「何でAちゃんが謝んのー」

アハッ、って笑った雅紀くんに今度は私が頭を撫でられる。

「でも、中身が入ってなかっただけ良かったよね！」
「え？」
「だって、中身入ってるコップが落ちて来たって想像したら悲惨じゃない！？痛いし、ビショビショになるし」
「フフッ、うん。そうだね」

でしょ？って、雅紀くんが目尻にキュッと皺を寄せて笑った。

どちらかと言えば、現実的で

どちらかと言えば、ネガティブで

どちらかと言えば、理屈っぽい私は

雅紀くんの、ポジティブで真っ直ぐな言葉にいつもハッとさせられて、そして心から笑顔にして貰えるんだ。

「ってゆーか、俺いつから寝てた！？」
「えっとー...お昼ご飯食べた後かな」
「ヒルナンデス観てたつもりなんだけど...」
「途中で寝てたねぇ」
「.....確かに3色ショッピング、2回戦が何色だったか覚えてない...」

好きな番組の、大好きなコーナーを居眠りで見逃してしまったのがショックなのか雅紀くんはガクンと項垂れた。

「雅紀くん、今度から録画しとこうか」
「え？」
「だから落ち込まないでね？」
「アハハッ！俺、そんな事で落ち込む程ガキンチョじゃないよ？」

顔を上げた雅紀くんが、私のほっぺたを両手でムギューって引っ張りながら笑う。