空想男子アディクション【ars】 (ページ3)

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立ち上がったニノミヤを、見上げる。

少し顎を上げた彼が私を見下ろして口角を上げたと思ったら

スッ、と私の前に片膝立ててひざまずいた。

そして、私の両手を取ってニノミヤの手で包み込む。

「...え？ちょ...何」
「シーッ。黙って」

私が黙ると、満足そうに頷いてンンッと咳払い。

「A、オレとここで暮らして下さい」

真剣な顔で

落ち着いた声で

「......え...」
「伝わった？意味、分かった？」
「......うん......」

私が頷くと、ニノミヤも頷く。

「もうAの攻略法は身に付けてんだよ」
「攻略...法？」
「遠回しでは分かってくんない。格好付け過ぎたらキョトンとしてスルーされる」
「......」
「ストレートに言わなきゃ、ダメなんだよね？」

そんな事も無いと思うんだけど...
どうしてニノミヤがそう思ったのかも、よく分かんないけど...

とにかく、心臓がさっきからずっとキュンキュンやらドキドキを繰り返してて息苦しい。

「本当は、毎日モーニングコーヒー一緒に飲もうとかさー言いたいトコをグっと我慢」
「目覚めの一杯はお白湯が良いんだよ？」
「オレの為に朝ご飯作ってくれ、とかさー」
「カズって朝からガッツリ食べると体調崩すよね？」
「もーA、面白くないなぁ」

面白くないって言ってるくせに、クフッて笑う。

「カズは私に面白さを求めてたの？」
「ううん。Aに求めてんのは、可愛さとー、癒しとー」
「......」
「愛しさとー、切なさとー...？」

何かを期待してる目で、私をジっと見る。

「......心強さと」

不本意ながら、無反応だとまた「面白くない」って言われそうだから応えたら

ニノミヤは、フハハッ！って楽しそうに笑った。

その間もずっと、ポーズは変わらなくって

ひざまずいて私の手を両手で包んだまま。

「このポーズは...何？」
「ん？だって、オレのお姫様に我が城で暮らせってお願いしてるんだよ？」

また何だかよく分かんないコト言い出したニノミヤが

「オレも王子様になんなきゃ」

パチン、と器用にウィンクまでして微笑んだ。

「......キザ...」

あのね、アンタは王子様じゃなくって、空飛ぶ絨毯に乗りたがってる純日本人なんだから。
ってゆーか、さっきはお殿様だったよね？

そんな風に思ってるのに

嬉しくて

嬉しくて

嬉しくて泣きそうだから、真っ直ぐ私を見てる鳶色の目から

目を逸らして、唇噛んだ。