215.愛なんだ。 ページ5
「でも...智さんはそれで良いんですか？」
何度もプロポーズするって事は、智さんは結婚したいんだろうし...
「うん。だって、アイツと離れる事は一生無いんだから。結婚が早くなるか、遅くなるか、ってだけ」
会った事も無い智さんの彼女を、羨ましく思った。
こんな風に想われたい。
...って、また何で私はあの小悪魔スマイルを思い出すの！バカッ！
「ま、結婚して貰えないかもしんないけどね？」
智さんが眉を下げてクシャッと笑う。
「あ、もしまたAちゃんが陶芸しに行くんだったら彼女紹介するね」
「はいっ！是非！」
「ちょっと変わった子だけど、その時は仲良くしてやって」
彼女を想ってるんだろうって時の智さんは、いつもより少しだけ男っぽい表情になる。
恋...ってゆーより、愛なんだろうな。なんて。
愛なんて知らない私が、イッチョマエに思ってみる。
「あ、私んち向こうなんで...」
横断歩道の手前で言うと、智さんは「一人で大丈夫？」って訊いてくれた。
「はい、いつも一人で帰ってますから！それに、もうすぐそこですし」
「そっか。でも気を付けてね」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみ、バイバイ」
綺麗な手をヒラヒラと振る智さんに、私も手を振って横断歩道を走って渡った。
ドゥパレに着いて、ふと上を見上げる。
5階の端っこの部屋、まだ電気が点いてる。
「起きてるんだ...」
...って、別に二宮くんが起きてるからって何も無いけど！
「はぁ...」
何か、もの凄く振り回されてる気がする。
いや、気がするんじゃなくて振り回されてる。
エレベーターのボタンを押して、「扉が開いたら二宮くんが居たりして...」なんて思ったけど
そんな漫画みたいな事が朝も夜も起きる事はなくて、エレベーターの中は誰も居ない。
その事に、ガッカリしてる自分に気付く。
何を期待してんだ、私は。
聞かなかった事にしなきゃいけないんだから。
忘れなきゃ。
ほら、二宮くんだって「言わなかった事にする」って言ってたし。
いやでも、「次に言う時は全部貰うつもりで」とも言ってた。
うん、言ってた。
だったら忘れちゃダメなの？
告白されたのに、何だろうこの若干の敗北感。
二宮くんが立場的にすっごく上の方に居る感じ。
何だこりゃ。
「疲れる...！」
脱力しながら部屋に入った私は、そのまま這いつくばってお風呂場へ向かった。
今日は熱めのお湯に浸かろう...。
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2015年10月23日 16時
