明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ9)

今日:3 hit、昨日:28 hit、合計:958,840 hit

184.月を見てたはず。ページ9

「うまっ。相変わらず百合子さん、料理うめぇな」

お団子が入ったほっぺたをモグモグさせてる。

なんか、小動物みたい。

「Aも食ったら？」
「あ、じゃあ。いただきます」

タッパーの中から一個取って食べる。
あんこ、久し振りに食べたなぁ。

「美味しい！」
「でも喉渇くよな」
「確かに...」
「ちょっと、飲み物取って来るわ。待ってて」

二宮くんがヒョイっとベンチから飛ぶように降りて、屋上から出て行く。

残された私は、傍にタッパーを置きさっきまでの二宮くんのように両脚をベンチに上げて膝を抱きながら、お団子を食べる。

何だか、子供の頃に戻ったみたいな気分だけど

夜空の下、ってのが大人でしか出来ない事な気がして不思議。

空を見上げても星は見えないけど、月はクッキリ見える。

首をガクンと後ろに折って、ジーッとその月を眺めてると

「何見てんのー？」

突然、目の前に現れた二宮くんの顔面アップ。

「ひっ！？」
「何だよ、それー。お化けでも見たみたいな声」
「だっ...だって、ビックリするに決まってるでしょ！？」

私の顔を上から覗き込むようにしてる二宮くんが、「オレがイケメン過ぎて？」なんて笑ってる。

「私は月を見てたはずなのに、突然顔が出て来たから！」
「それだけ？」
「それだけー」

私がそう言うと

ふーん...ってつまんなそうに呟いて

「ドキドキしないの？」なんて、まだ私の顔を覗き込んでる。

「しないよ。それより、首が痛いからそこをどいて欲しい」

二宮くんの顔が邪魔で首を元に戻せないんだって。
このまま戻そうとしたら、二宮くんの顎に頭突きを食らわす事になってしまう。
別にそれでも良いけど。

「ねぇ」
「何？早くどいてよー」
「これでも？」

これでもって、何がよ...って思ってきっと眉間に皺が寄ってるであろう私の顔に

グイッと二宮くんの顔が近付いて来た。

二宮くんの前髪が、私の頬に触れる。

「ドキドキしない？」
「......ちょ...二宮くん...！」
「んー？」
「...わーたーしーでっ！遊ばないでってば！」

もう、頭突きしちゃうとかお構い無しに首を戻す為に頭を持ち上げた。

「いってぇ！お前！頭が鼻に...っ！」
「どうせまた、ガード緩いとか言うつもりだったんでしょ！残念でしたー！」
「すげぇ石頭...」
「参ったか！」

両手で鼻を押さえて涙目になってる二宮くんを指差して、私は鼻息荒く勝ち誇った気分。

彼は「コイツ信じらんねぇ」って、何故か笑ってた。