明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ28)

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203.負けない。ページ28

帰りは、「久々にニノんち行く」って言う相葉くんと一緒に帰った。

「やっぱ、こっちの桜が一番落ち着くなー」
「大阪、楽しくなかった？」
「楽しいんだけど、お客さんがめっちゃ喋りかけてくんの！だからもちろん一緒に喋るでしょ？そしたら、翔ちゃんに喋り過ぎって怒られんの。その繰り返し」
「アハハッ、そっか。陽気な街だね」
「うん、陽気だよ」

相葉くんは確かに、喋りかけられたら楽しんで喋っちゃいそう。

櫻井さんはきっと、当たり障りの無い返事を一言二言返してニコっと微笑んで立ち去るんだろうな。

「...櫻井さんは、上手くやってそうだよね」
「やっぱ、あの人デキるんだなって思った。そりゃモテますよ！って思い知らされたかな！」

後頭部をガシガシって掻いて、相葉くんが夜空を仰ぐ。

「何かもう、色々と悔しかった！だけど...負けたまんまは、やだなって思った」
「...え」
「あ！別に、静香さんを奪うとかそーゆーんじゃないよ！？」
「ビックリしたー...」

とうとう相葉くんが宣戦布告なのかと思った。

「そうじゃなくってね、男として負けたくないなって。今の俺は惨敗だけど、何年か後には翔ちゃんに『やるじゃん』って言わせたい」
「うん」
「とりあえず、身長は勝ってるからー...」
「えっ！？そこ！？」
「他に何も勝てないんだから、それだけでも勝たせてよ！」

ケラケラ笑ったら、静かな町に二人分の笑い声が響いて思わず顔を見合す。

私は相葉くんが櫻井さんに負けてるなんて、思わない。

そりゃ櫻井さんは大人だから経験値とか余裕とかそーゆーのはあると思うけど、性格とか性質は相葉くんだって良い。
何だったらルックスだって、櫻井さんに引け目をとらない。

だけど、きっと、「負けたくない」って気持ちが彼を成長させるんだろうな...なんて生意気にも思っちゃったから

「頑張って櫻井さんを追い越しちゃえ！」

そう言って、相葉くんの背中をパコーンと平手で叩いた。

「ぃいって！」
「ってゆーか、もっと太ってよ！骨っぽくて私の掌も痛いんだけど！」
「叩いたくせに文句って何ー！」

ドゥパレに着いてエレベーターに乗り込む。

「二宮くんに連絡しないで良いの？」
「どうせ居るって。電気点いてたし」
「いつの間にチェックしたの？」
「もう、癖。ここに来たらニノんちのベランダ見ちゃうの」

私は二階で降りて、相葉くんは「おやすみ」って笑って手を振る。

「おやすみ」

私も呟いて部屋に帰った。