明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ27)

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202.おたべ。ページ27

ニコニコしてる相葉くんに、ミワちゃんが慌てたようにペコっと頭を下げる。

「おはようございます！」
「俺、今日からまたこっちのシフト入んの。だから、改めてよろしくね」
「あ、はい！こちらこそ、よろしくお願いします！あ...でも、今日はもう上がりで...」
「そっかー。でもすぐ一緒になるだろうから、仲良くしようね！あ、俺ちょっと料理長に用があったんだった。ごめん、先に行くねー」

相葉くんがバイバイってミワちゃんに手を振って、そのまま店へ入って行った。

「...Aさん..」
「ん？」
「相葉さんって...」
「うん、どうしたの？」
「あっ...！何でも無いです！あのっ、お疲れ様でした！」

やけにワタワタしたミワちゃんが、止める間も無く走り去って行く。
可愛いボブの髪とスカートが、フワフワ揺れた。

店に入り、着替えを済ませてホールに出ると相葉くんが「お土産あるよ！」って紙袋を見せてニヒって笑う。

「えー！なになに？大阪だから美味しい物いっぱいありそう！」
「食べ物だなんて言ってないのにー」
「違うの？」
「違わないけど」

他のスタッフも集まって来て、なになに？ってちょっと盛り上がる。

「はい、どうぞー！ケンカしないで食べてねー！」

相葉くんがジャーンって感じで出した箱に全員がポカンとした。

「あれ？どうしたの？」
「相葉くん、これ...」
「うん？」
「生八つ橋...」
「うん！『おたべ』って言うんだよ。可愛いよねー、さぁお食べ！」
「...京都の名物だね」

私が言うと彼の丸い目が、更に丸くなる。

「えっ！？京都！？」
「何故あえてこれを...」
「だって...売ってたから...」
「まぁでも、美味しいよね！」

間違った事にショックを受けてそうな相葉くんをよそに、スタッフは箱から生八つ橋を出してワイワイ食べた。

営業中、ちょっと暇になった瞬間に相葉くんとレジで二人になった。

「大阪どうだった？」
「楽しかったよ！向こうのスタッフに関西弁を教えて貰ったり」
「どんな関西弁習ったの？」
「好きやねん、の正しいアクセントとか」
「フフッ、いつそれ使うの？」
「関西の女の子を好きになった時」

ちょっと沈黙。
聞きたいのは、そんな事じゃ無いでしょ？って言ってるみたいな彼の視線。

「...元気、だった？」
「うん。...元気だったよ」
「そっか。良かった」
「......浮気もしてなかった」
「...そりゃそうだよ」
「幸か不幸か」
「幸でしょ！もうバカ！」

私が笑うと、相葉くんも笑った。