明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ25)

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200.金木犀。ページ25

その日、私はディナーから出勤する為にロマドーを歩いてた。

風に乗って、良い香りが鼻に届く。
思わず立ち止まり大袈裟にクンクンして、その香りを楽しんでたら

「金木犀だね」

後ろから声を掛けられた。

振り返ると、制服姿の潤さんがそこにある金木犀の木に顔を近付けて香りを嗅いでる。

「潤さん！わー、何だかお久し振りですね！」
「そうだよね、前に会ったのってかき氷食べた時だから...夏か！たまには交番に遊びにおいでよ」
「フフッ、交番って遊びに行っても良い物なんですか？」

喋ってる間も、金木犀が優しく香る。

「俺、金木犀好きなんだよなー」
「私も」
「秋が来たなぁって思えるし。五感で四季を感じられるのって良いよね」
「風流ですね」
「こんな顔だけど和の心を持ってるから」

クスクス笑い合い合って小さな黄色い花を見ながら、何だかまったり。

「潤さんパトロール中ですか？」
「あぁ、さっき生徒手帳拾ったから学校まで届けに行ってた」
「学校？」
「うん、そこに女子校あるでしょ？」
「女子校...それ、絶対キャーキャー言われてますね」
「えぇ！？アハハッ、そんな漫画みたいな事は起きないよ！」

潤さん、「無い無い！」って朗らかに笑ってるけど絶対言われてる。
漫画みたいに表沙汰になってないってだけで、生徒の間では間違い無く大騒ぎになってる。
だって、この美貌！

きっと、生徒の中には元々潤さんを知ってる子も居て「ポリ潤だー！」とかちょっと得意げに言っちゃったりして
何だったら先生だってウットリしちゃってるかもしれない。
だって、この美貌！！

「潤さん、鈍感だとか言われた事無いですか？」
「鈍感...あー、カズやまーに言われた事あるけど。何で？」
「え？フフッ、何でも無いです」
「えー？気になるなぁ」

やっぱり朗らかに笑ってる。

交番に戻る潤さんと並んで歩く。

「Aちゃんは、これから仕事？」
「はい」
「結構夜遅くまでだよね？大変だね」
「そんな事無いですよー、ディナーの時はお昼過ぎまで寝てたりするから元気なんです！」
「若いって良いねー！」
「潤さんだって、まだ若いでしょ！」

もうオッサンだよー、って背筋を曲げて腰をトントン叩く潤さんの仕草が似合わなくて笑ってしまう。

「ねぇ、Aちゃん」
「はい？」
「心も元気？」

またピンと背筋を伸ばして、私の目をジっと見る。

吸い込まれそう、ってこーゆー事なのかな...なんて思った。