明日の天気の話をしよう 6th【ars】 (ページ1)

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176.コイバナ。ページ1

耳を赤くした二宮くんが、亮くんからのハガキをジィっと見て「きったねぇ字」って笑って

「オレ、ブラコンなのかもなー」

困ったように、眉毛を下げた。

「フフッ、そうなの？」
「だってオレ、百合子さんに散々帰って来いって言われても断固拒否だったのに」
「うん」
「亮の手紙だけで、心揺れた。ンフフ」

二宮くんはやっぱり照れ臭そうに微笑む。

「帰りたくなった？」
「んー...ちょっとね。でもやっぱ自分で決めた事はね、貫きたいのよ」

オレ頑固だし、って言うと彼はハガキを肩に提げてたバッグに入れた。

「雅紀のお喋りなお口が言ってたっしょ？オレが一人前になるまで実家には帰らないって決めてるコト」
「うん」
「それはやっぱ、曲げらんないワケ」

二宮くんの抱えてる、色々。
私が知ってる事なんてほんの少しだけど、彼のたくさんの覚悟は伝わって来てた。

「ま、でももーちょっと頻繁に遊びに行ってやろっかな」

だけど、お兄ちゃんの顔になる二宮くんを見ると家族への色々が彼にとってどんどん良い方向になってたりするのかな？...なんて

何も知らない私が言う事じゃないけど。
言ったって、どーせ「余計なお世話！」って言われるだろうけど。

「そうだね！勉強の息抜きに亮くんに遊んで貰ったら良いと思う」
「はぁ？オレが遊んでやんの！」
「うんうん、そーだねぇ」
「ムッカつくなぁ、お前」

ムゥって顔して私の腕をポコッと拳で軽く叩き、クフッて笑う。

「でも亮が居るから、実家も居心地悪いって思わなくなったし。亮に感謝だなー」
「そっか」
「だって亮が生まれなかったら、オレは百合子さんに禁断の恋を貫いてたかもしんないんだよ？あっぶねー！」
「......もう、その辺りのコトは大丈夫なんだよね？」

恐る恐る訊いてみると、二宮くんは片眉を上げた。

「女子は禁断のコイバナが好きだよねー？」
「あっ...いや、そーゆーワケじゃないんだけど！」

慌てて首をブンブン振ると、彼はスッと目を伏せて

「まだ好きだよ...百合子さんのコト...忘れらんない...」

搾り出すように、呟いた。

「......え...二宮くん...」

伏せられてた二宮くんの目が、ゆらっと揺れる。

何だか、胸が苦しくて

私、酷い事を訊いてしまった...って自己嫌悪して

「ごめん...あの...」
「......こんなコト、言わせんなよ...」

ゆっくり近付いて来た二宮くんが、私の手首をキュッと掴んで

少し睨むように、視線を合わせた。