24.理由。 ページ24
私服のスタジャンの袖を肘の側まで捲り上げて、氷入りのダスターを当てながら店の前で櫻井さんを待つ。
てっきり店の中から出て来ると思ってたら
「A、乗って」
櫻井さんは、目の前の道路に車で現れた。
「え？」
「早く！こんなトコに停まってたら迷惑になっちゃうから！」
チョイチョイって手招きされ、慌てて走って車に近寄ると
運転席から出て来た櫻井さんが助手席のドアを開けてくれた。
それに戸惑ってると「もう、早く乗れってば！」って眉を下げて笑う。
私が乗り込むと、小走りで運転席に戻って車を発進させて
総合病院まで連れてってくれた。
診察の結果、早めに対処した事と直接肌に触れたんじゃなくて長袖が一枚壁になってたお陰でそんなに大した火傷にはなってなかった。
痕も徐々に消えるだろう、と。
診察室を出ると、待合室には櫻井さんが脚も腕も組んで座ってて
その態度は見ようによっては偉そうなのに、そう見えないのはこの人の持ってる雰囲気なのかもしれない。
「どうだった？...痕、残りそう？」
「消えるそうです！」
「おっ！マジか！良かったー...」
ハァ、と大きく息を吐き出すと、眉を下げて「安心したわ」って笑う。
ギュウ...って、また胸が縮む。
何か...やだな。これ。
櫻井さんが「労災申請しなきゃ」って言いながら、治療費の支払いしてくれて(ちゃんと保険証持ち歩いてて良かった)
薬局で薬を貰って、また櫻井さんの車に乗る。
さっきは腕の痛みであんまり気にならなかったのに、今は運転してる櫻井さんの横顔が気になって仕方無い。
ハンドルに絡む指が、気になって仕方無い。
「...あの、櫻井さん...」
「んー？」
「失敗しちゃって、すみませんでした」
「誰だって失敗はするでしょ。ロボットと働いてる訳じゃないんだから、これ位許容範囲」
ハハッ！って笑う。
「大事なのはね、同じ失敗を繰り返さない事」
「え？」
「これからは『俺には背中にも目があるんだぜ！？』って気分で働いたら良いよ」
「えぇ？」
そしたら本当に背中に目がある気がしてくるから！って、また笑うと
「あー腹減った。A、飯食いに行かない？」
って、チラッとこっちを見た。
「え...？」
「俺の賄い、用意されてないだろうし。でも食わなきゃディナー勤務無理！」
行こ！って、櫻井さんはハンドルを切る。
仕事とは違う表情に、またギュウ...ってなる。
やだな...その理由なんてもう、自分で分かっちゃってる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2928人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まめなり(プロフ) - 図々しいかもしれませんが続編を検討していただけると何よりも嬉しいです。最後までお読み頂きありがとうございました。長文失礼いたしました。 (2017年7月18日 10時) (
レス) id: ba375aaf37 (このIDを非表示/違反報告)
まめなり(プロフ) - 最後Nくんは実家に帰ったのかなぁとかAくんとあの子はどうなったのかなぁとかOくんはあの子とどうなったのかなぁとかSくん結婚しないかなぁとかMくんもあの子とどうなったのかなぁとか。そして何より1番気になるのは主人公のカフェはどうなったのかなぁと。 (2017年7月18日 10時) (レス) id: ba375aaf37 (このIDを非表示/違反報告)
まめなり(プロフ) - が好きです。ロマドーの雰囲気もそこで暮らしている人々も。(個人的には最後結ばれるのが担当様だったのも嬉しかったです笑) 今まで色々reiさんのお話を読ませて貰っていましたが、このロマドーも相変わらず素敵なお話だと思いました。そこで続編のお願いを…笑。 (2017年7月18日 10時) (レス) id: ba375aaf37 (このIDを非表示/違反報告)
まめなり(プロフ) - こんにちは！どこに書けばいいのかわからなかったのでココに。私はロマドーの2章が始まったくらいで受験勉強のために占ツクから離れた者です。受験も終わり久々に占ツクを訪ねてみるとロマドーが完結していて思わず読んでしまいました。率直に言ってホントにロマドー (2017年7月18日 10時) (レス) id: ba375aaf37 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - いきなりすいません！君の名は。って話ありますね笑 (2016年10月27日 14時) (レス) id: 55ecfc4463 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2015年1月27日 19時
