し ページ28
「...たんじょ...」
「人間界で言う12月24日『クリスマスイブ』は、マサキの誕生日だ」
止まってる街の中を、コートを着たその人は白い息を吐き出しながら走り続けてる。
「魔法界戻って来てからアイツ、もう生きてる意味無い！このまま死 刑にしろ！とか言い出すし...暴れるし...」
「えっ！？」
「公務執行妨害だわ、再逮捕よ。再逮捕」
「えぇっ！？」
ニノさんは、薄い唇を綺麗に持ち上げた。
「だから、罰を与えたんだ。オレよりほんのちょっとだけ偉い裁判官に頼んでー、魔王さんの許可も貰ってー。ンフフ、魔王さんの口うるさい側近に嫌味言われながらな」
「罰...？」
「知らないと思うけど、この世に存在する種族の中で魔法使いは一番格が高いんだ。ニンゲンもまぁ、それなりだけどオレらよりは格下」
「...はぁ、格下...ですか」
他にどんな種族がいらっしゃるんだろう...宇宙人とか...？
「格下げされるのは、魔法使いにとっては極刑以上かもしんねぇな」
「.......」
「空も飛べなくなんだし、不便な事ばっかだし、人間界って何か色々面倒だし」
いつかのように煙草のような物を取り出し唇に軽く挟み、指先で火を点ける。
「だから、魔法使いがニンゲンにされてしまうのは何よりも重い罰...の、はずなんだけどな？」
フワリと煙を口から吐き出し、ニノさんは笑う。
「それを涙流しながら喜ぶような特殊な魔法使いも、ま、中には居るんだな」
息が切れたのか、途中で立ち止まり身体を折って肩で呼吸をしてる彼を「ホンット、馬鹿だわ」ってニノさんは柔らかい声で文字通り馬鹿にした。
「今日は、刑罰執行日だ」
「...執行...」
「オレ、執行官だから見届けなきゃなんないの」
再び走り出した彼が、私に気付いた。
もう会えないと思ってた、あの笑顔。
そして
「...もう、マサキ...また泣いてるし」
「フハハッ！マサキの涙腺、どっか切れちゃってんじゃねぇの？」
泣いてるんだか笑ってるんだか、もう何なんだか分からない表情でマサキは手を振ってる。
「あーあー、ブッサイクな顔」
「...可愛い...」
「お嬢さん、痘痕も笑窪って言葉知ってる？」
「...可愛いーぃ...」
「こりゃ重症だわ。ンフフ」
煙草を咥えて、ニノさんは呆れたように笑った。
「Aちゃん！！」
また私の名前を呼んでくれる、愛しい声。
また私の身体を包み込んでくれる、愛しい腕。
また私の髪を撫でてくれる、愛しい掌。
マサキの涙で、私の頬が濡れた。
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2014年12月5日 15時
