千夜一夜に降る君と描く物語【ars M.A】 (ページ25)

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なページ25

どうしてそれに気付かなかったんだろう。

マサキが人間になれば...

こんな簡単なコトで、私達の時間はこれからも守られるんだ。

どうして気付かなかったんだろう！

「ね！？マサキ！」
「Aちゃん...」

だけど、マサキは笑って無くて...

「それは...叶えられないんだ...」

哀しそうに、言った。

「...何で...？だって、マサキ何でも叶えてあげるって言ってたでしょ！？」
「うん...Aちゃんの願い事なら、何でも叶えてあげられるよ」
「じゃあ...！マサキを人間にして！それしか無いもん！」

マサキの腕を掴んで揺さぶっても、彼は眉間に皺を寄せて首を振る。

「僕が僕の願い事を叶える事は、出来ないんだ」

その言葉の意味が、分からなくて

「...私の願い事だよ...？」

そう言うと、マサキは小さく笑った。

「僕の願い事だよ。『人間になって、Aちゃんとずっと一緒に居たい』」

冷たい風が吹く。

2人の間を引き裂くように、吹き抜ける。

「僕がそれを強く願ってしまってる限り、それは僕の願い事になってしまうんだ」
「そんな...え...じゃあ...」

考えろ...考えろ、私...

マサキと一緒に居れるようなお願い...

「...もう時間だ。ありがと、Aちゃん。ホント、楽しかった」
「え...ちょっと待って...！」
「ずっと傍に居てあげられなくって、ごめんね...」
「待ってって！今...考えるから...！」

何か...何か...！

私！何か無いの！？

「Aちゃん、魔法は12時に解けちゃうんだ」
「...え？」
「こないだ観た『シンデレラ』でも、12時に魔法は解けた」

マサキの手が、スゥ...っと透けて行く

そこが透明になって、順に腕が透けてそこも次第に消えて行く

「待って...待って、マサキ...！」

マサキの消えゆく腕を掴もうとしても、私の掌は空を掴んでしまう。

「笑って、Aちゃん」
「...無理だよ！」
「最後に笑ってるAちゃんが見たいな」
「...マサキ...」

こんな状態で笑えって

大好きな人が消えてってるのに

もう二度と会えないって分かってるのに、笑えって

どんなドSなんだ！バカか！

「じゃあマサキだって、笑ってよ！」
「...無理だよ」
「お互い様でしょ！笑え！」
「ハハッ！最後なのに厳しいなぁ、Aちゃん！」

涙でグシャグシャのマサキが、笑った。

だからつられて私も笑った。

「やっぱ笑顔が一番可愛いね」

何だその捨て台詞。男前か。

もう誰も居ない目の前に、「バカ」と呟いた。