千夜一夜に降る君と描く物語【ars M.A】 (ページ19)

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ウページ19

マサキが私を見下ろして髪を撫でながら

何度も小さいキスを身体中に落としてく。

何も着けてないマサキの身体は、人間と何も変わらない。
全部、全部、人間と同じなのに...

「魔法界ではね、好きな人とこうやって抱き合うんだ...人間界は...？」
「...うん、人間界も同じだよ」
「そっか...良かった」

薄いけど広い胸に、下からそっと触れると

マサキは片頬をキュッと上げた。

「Aちゃん」
「ん？」
「怖くない？」
「フフッ...魔人とこうなるのは初めてだから、ちょっと怖いかな」

私が少しだけ笑うと、マサキも微笑む。

暗い部屋

止んだ雷

大きな掌

潤んだ声

重なる体

揺れる影

その全てを愛おしいと想う。

その全てを手離したくない。

真っ白になり行く頭の中で、ひとつだけ決心した。

たったひとつ。

ひとつだけ。

・

「マサキ...」
「ん？」

人間と何も変わらない、その腕の中で彼を呼ぶ。

「...何でも無い」
「フフッ...何それー」

笑うマサキが軽く、優しい口付けをくれる。

「魔法界もするの？これ...」
「これって...あぁ、腕枕？」
「あるんだ、腕枕」
「恋愛事情はあんまり変わらないね、人間界も魔法界も」

私の頭の下にあるマサキの腕をそっと撫でる。

「変わらないね...」

何も変わらないのに。

どこも違わないのに。

「マサキ...」
「ん？あ、また何でも無いって言うんでしょ！」

このこのー！って私のほっぺたをグリグリするマサキに、私も同じようにお返しして

そのジャレた空気に溶かすように

「ずっとこのままで居られたら良いね」

私は、小さく呟いた。

「...そうだね、ずっと...居られたら良いね...」

マサキも小さい声を零して、またグリグリと私のほっぺたを指でつつく。

「もう！ちょっと痛い！」
「だってAちゃんのほっぺた、可愛いんだもん」

甘い空気は、永遠のようにも感じる。

でもそれは私が永遠に続いて欲しいと願ってるからってだけかもしれない。

・

毎朝「いってらっしゃーい」って見送られて

毎晩「おかえりー」って迎えられて

「美味しいね！」って「楽しいね！」って二人で笑い合って

この毎日が続くのならば、願い事なんて何も無い。

だって、それが私の願い。

他に何もいらない。
3つ目の願い事なんて、いらない。

私のたったひとつの決心

『3つ目の願い事は、もう言わない。』

そしたら、マサキはいつまでも傍に居てくれる。

それがもう、私の願い事のような物。