千夜一夜に降る君と描く物語【ars M.A】 (ページ18)

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止めどなく続く雷。

その間中、「大丈夫、大丈夫...」ってマサキは私を抱き締めて頭を撫でてくれた。

子供の頃から怖くて怖くて仕方無かった雷が、もしかしたら好きにだってなってしまうかもしれない...って

ゲンキンだけど、そう思ってしまった瞬間

一際大きな轟音が鳴り響いたと思ったら、部屋の電気がテレビも含め全部消えた。

「...あれ？Aちゃん、電気消した？」
「...私ここに居るのに消せないでしょ...」
「あ、そっか。え？じゃ何これ、魔法？人間界にも魔法があんの？」
「停電だよ...雷が落ちたんだね...」

真っ暗な部屋で、トクトクとマサキの胸の音が伝わって来る。

けどきっと、私の胸はトクトクどころじゃなくてドックドックしてて...

マサキにそれは絶対に伝わってるんだろうなって思ったら、恥ずかしくて腕の中から逃げ出したくなった。

「あ...マサキ。私、何か...照らせる物取ってくる...」

アロマキャンドルを灯せば良いかな...

そう思って、マサキの胸をソッと押したら

「...いらないよ」

ギュウっと抱き寄せられて

「このままで良いから...もう少しこうさせて...」

耳元で、掠れた声が囁く。

その声が胸に痛い。

その声が心に甘い。

その声に、全てが融けてしまいそうになる。

ふっ...と、力の抜けたマサキの腕

少しだけ離れた身体に不安になって、彼のスウェットをギュッと握りしめた。

マサキの長い指が私の頭...頬...唇と滑り、撫でる。

顎まで来たその指に、ソッと顔を上げさせられると

暗い部屋、光った稲妻で照らされるマサキの顔が見えた。

ゴロゴロゴロ...その音は、だんだん遠ざかってるように思う。

涙が溢れた。

雷が怖いのか

停電が怖いのか

マサキが愛おしいのか

何だか分からないけど、涙が溢れた。

その涙を何も言わずに、マサキが親指で拭ってくれて

濡れた瞼に、唇を柔らかく押し当てられた。

その唇は、引き寄せられるように私の唇に触れる。

私の、涙の味がした。

「Aちゃん...魔法界ではね...」
「......」
「好きな人には、こうして口付けをするんだ...」

『好きな人』って言葉に、また涙が溢れる。

嬉しい

嬉しい

なのに、どうしてこんなに辛いの。

「...人間界も一緒だよ...」

私は自分からその唇にキスをして

魔法界とか人間界とか。
何それ！漫画か！

なんて思いながら、私がこんなに辛いのはこれが原因なんだよ...ってのも、ちゃんと分かってた。