千夜一夜に降る君と描く物語【ars M.A】 (ページ15)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:377,161 hit

タページ15

帰ると案の定お腹を空かせて待ってたマサキに、買って来たスウェットを渡して

彼が着替えてる間に、冷蔵庫にあった物と冷凍ご飯を適当に炒めてチャーハンを作っておく。

「わ！良い匂いー」

グレーのスウェットに着替えたマサキが、クンクンと鼻を鳴らしながら私の隣にピッタリと立って

やっぱこの人、距離感近いなー...って顔を向けると

思ってた以上に、顔が近くて「ひっ」って変な声が出た。

私の作ったチャーハンを口いっぱいに頬張って食べてるマサキは、単なるスウェットすらオシャレに見せて

モグモグしながら横目でテレビを観てるその表情さえ、何だか男前で...

何か私、魔人と暮らす事になったってのも凄いんだけど、こんな美青年と暮らす事になったって方が凄いような気がして来た。

・

私とマサキの、妙な共同生活...とゆーかマサキの居候生活とゆーか、それが始まってから数日。

毎朝「いってらっしゃーい！」って笑顔で見送ってくれて

毎晩「おかえりー！」って笑顔で迎えてくれて

私の作った適当なご飯でも「美味しいねー！」って笑ってくれて

ホントに犬でも飼ってるみたいに、私は癒されてた。

だけど、寝起きのマサキは変に色っぽいし

お風呂上がりのマサキも変に色っぽいし

真顔で雑誌読んでるマサキも変に色っぽいし

何だか色々と無駄に色っぽいし

無意識なのか何なのか、漏れまくってるその色気に癒されるどころかソワソワもするんだ。

ある週末に、二人で『アラジン』のDVDを観た。

マサキは「魔人にあんな真っ青な人居ないよ！？」ってビックリして

アラジンとジャスミンが空飛ぶ絨毯で空中デートをする場面では、ポロポロと泣いて

「...Aちゃん！今度、こんなロマンチックな空中デートしようね！僕、歌うからぁぁぁ」ってグズグズの顔で私の手をギューッて痛い位に握り締めて来た。

どうやら『アラジン』が気に入ったマサキは、暇さえあればDVDを流して

「ねぇ、Aちゃん！聴いて！」

例のあの名曲も覚えたみたいで、私に歌ってみせる。

犬...どころかまるで、可愛らしい彼氏が出来たような錯覚に陥る。

だけど、それは違って彼は...罰を執行されてる最中の魔人で...

「Aちゃん、お願い事決まった？」

毎日のように言われるその言葉で、いつだってこの時間はいつまでも続かないしマサキは魔法界に戻るんだって実感する。

「...まだ」

いつまでも、願い事を言いたくない。

許されるなら、ずっと言いたくない。