出 ページ11
「ところで魔人さん...」
リビングに戻った私は、後ろからついて来てる魔人に声を掛ける。
「何？ご主人様」
「それ！」
「へっ？それ？」
「その呼び方」
「え？『ご主人様』？」
私がソファに座ると、魔人も当然のように隣に座った。
「それ、やめて欲しいんだよね」
「何で？だって僕のご主人様だよ？」
「んー...何か、電気街の萌えーな女子を連想しちゃうとゆーか...」
「燃えーな女子？強そうだね！」
何を勘違いしたのか、シュッシュッと両手の拳をボクシングのように突き出してる魔人。
「それに何だか偉そうだし、ご主人様って。恥ずかしいよ」
「そう？じゃあ、何て呼ぼうか。...あ！お嬢様！？」
「はっ！？何それ、やだ！ドSな執事に『アホでございますか？』とか言われるんでしょ！？ってかどっから出て来たの！？お嬢様なんて！」
「ニノが『お嬢さん』って呼んでたから」
「ニ...ノ？」
私が訊くと「僕をご主人様に預けた人が居たでしょ？」って言われて
あの顎にホクロのある、妙に綺麗な顔してた男の事を思い出す。
「あー...あの人か。あ、ねぇ、あの人は何者なの？」
「ニノは、刑罰執行官。罪人の罰を執行する役人さんだね」
「偉い人だったんだ...ふーん」
「ひねくれ者だし、意地悪だし、変な奴だけどねー！」
魔人は目尻に皺を浮かべ、何かを思い出すようにクスクス笑った。
「偉い人なんでしょ？そんな事言っちゃって良いの？」
「偉いけど、僕の幼馴染だもん」
「あ、お友達なんだ」
うん、と頷いた魔人がまたハート型のクッションを抱く。
「で、どーする？」
「え？」
「呼び方。ご主人様じゃなくてー、お嬢様じゃなくてー」
「あー、もう普通に名前で良いよ」
私は立ち上がり、飲み物を取る為に冷蔵庫を開けた。
中には缶ビールと、お茶。
本当はビールを飲みたい所だけど、魔人に飲ませて酔われるのも困るからお茶をグラスに注ぐ。
「ねぇ、じゃあ名前教えて！」
「A」
お茶の入ったグラスを魔人に手渡す。
「Aちゃん、ね！」
名前を呼ばれるのって、こんなドキッとするもんだっけ...？
「じゃ、僕の事も名前で呼んでよ」
「名前あるの？」
お茶を一口飲んで、魔人は「あるに決まってるでしょー！」と笑った。
「マサキ」
彼が名乗る。
「...マサキ...」
「呼び方はマー君でもマサキングでも何でも良いよ！」
「マサキングは無いわー」
「えー、強そうで良いと思ったのに」
『マサキ』が楽しそうに笑った。
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2014年12月5日 15時
