千夜一夜に降る君と描く物語【ars M.A】 (ページ1)

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呼ページ1

朝から変な日だとは思ってた。

普段は目覚ましが鳴っても起きれない程の私が

日曜なのに、目覚ましなんてかけても無いのに、昨日夜中の三時まで深夜番組観てたのに

朝８時に目が覚めた。

しかも、妙にスッキリしてる。
全然眠くない。
二度寝なんて、必要無い。

朝ご飯なんていつも食べないのに、今日に限っては食欲もモリモリで昨日の残りご飯に卵を掛けて食べた。

洗濯もした。

掃除機もかけた。

グウタラな私が、朝から何故だか「やらなきゃいけない」気がして、部屋を片付けた。

10時が来る頃、私は身なりを整えて外へ出た。

目的地なんて無かったはずなのに、今、私は前から決まってた事のように近所の大きな公園に居る。

「...フリマだ」

久々にやって来たその公園ではフリーマーケットが行われてて、賑やか。

「ちょっと見て行こうかなー」

昔からフリマは好き。
掘り出し物を見付けるあの宝探しな感覚が、好き。

ワクワクした気持ちで色んなブースを眺める。

自分ちにあった不用品を売ってるんであろう、主婦さんや
オシャレな古着を売ってる、プロなのかな？って感じの人
ピクニック気分で手作り雑貨を売ってる、専門学生風の若者

「お嬢さん」

ウロウロと小さなお店たちを物色してた私は、その声に足を止めた。

「お嬢さん、ってば」

キョロキョロと辺りを見回すと、ゴザの上に胡坐を掻いてその膝に右腕を乗せ頬杖を付いた男性。

エスニックな服装なのに、ゴザの端っこに丁寧に揃えられてるのはごっついマーチンの8ホール。
顔は、長い前髪で目元が隠れてしまっててよく分からない。

「ねぇ、お嬢さん」
「...え？私？」

もう一度、キョロキョロを周りを見回してみる。

「アナタの他に誰がいんのよ」

男性の口元が、ニっと笑った。

「ちょっと、こっち。来てみ」

ゆらりと左手が上げられ、袖が捲れて男性の白くて細い手首が覗く。

「おいで」

ヒラヒラ、その手首が私を手招く。

私は誘われるようにその男性の元へ歩み寄り、ストンとしゃがんだ。

「いらっしゃい、お嬢さん」
「...あ、ヤバイ。これはもしや、新手の押し売りでしょうか」
「フハハ！違うわ」

何だか不思議な力に引っ張られたような感覚がしたんだけど...気のせい？

「さて、お嬢さんに問題です」
「...はい？」
「フリーマーケットって、どうゆー意味か知ってる？」

向かい合って初めて、前髪の隙間から彼の透き通るような鳶色の目が見えた。