6話 ページ7
あれ、これどういう事なんだろう。
主が鍛刀した刀に霊力を注いだらそこに顕れたのは小さな少女。彼女は永い眠りからいきなり目覚めさせられたように眠気眼をこすり、こちらをぼうっとした瞳で見つめてきた。
「おい……光忠、これはどういう状況なんだ。」
「…………僕にもさっぱりだよ。」
いつもスマートになんでも解決、とは流石の僕もいかなくて、3人の間に流れる沈黙。だいたい何がおかしいってまず刀剣男士しかいないはずなのに少女が出てきたことだ。まさか乱くんみたいなタイプかな…？という考えが一瞬脳裏を過ぎていったけど正真正銘、普通の女の子だろう。
「あー、んと、その何だ。お前の名前は………？」
女の子慣れしていない彼が頭を掻きながらバツの悪そうに話しかけているのは見ていてちょっと面白い。
意識も大分落ち着いてきたのか、目の前に座ったままであった少女は、はっとして立ち上がり居住まいをただした。
『………A。……Aと、無銘刀でしたが主人からその名前を頂きました。』
「A、か。お前は誰に仕えていたんだ？」
話し方こそぶっきら棒だけどその瞳は気遣うような色を含んでいて、目線を合わせるように蒼斗君は屈み込む。
だけどその瞬間、彼女の瞳からは小さな涙が零れ、次々と美しい白い肌を濡らしていった。
「えっ、あっ、悪い……！怖がらせちまったか!?」
いきなりの事で慌てふためく主を見ているのは凄く面白いけれど、はらはらと涙を零し続ける彼女を見ているのは何だかとても可哀想で、俯いたその影に寄り添い、よしよし、と頭を撫でてあげた。
『ぐすっ………っ、ごめん、なさい……っ』
「いいんだよ、大丈夫。嫌なことでも思い出させちゃったかな…」
しゃくり上げる肩と必死に声を押し殺そうとするその姿には一種の庇護欲を感じさせられる。儚い美しさを漂わせた彼女の容姿も相まって何だか不思議な気持ちだ。
『…………………総司、さまが…………っ』
「えっ？」
しかし一瞬聞こえたその言葉に思わず蒼斗君も僕も目を見張った。
『私の主…………新選組一番隊隊長、沖田総司様とその方の恋人が、私の主でした………』
幾分呼吸を取り戻した彼女が伝えたのは自分の前の主の名。
新選組といえば誰もが知ってるくらい有名な名前だ。もちろん主だって分かっている。その中でも絶大的な人気を誇る沖田総司は特に評判が高い。
ただ驚いたのはそこではなくて、沖田を前の主に持っていた刀はこの本丸に2人ほどいる。
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作者名：ルイス | 作成日時：2016年10月25日 0時
