お口に合いますか？ ページ9
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あの約束をした日から3日、いや4日経った金曜日。
あれから彼女は一度も姿を現さなかった。
嫌われてしまっただろうか。
そう不安に思いながらも、授業のない日も毎日昼休みには必ずそこに訪れるようにしてみたんだけど。
1度も、会えなかった。
『何か体調でも崩したんじゃね？』
いのちゃんはそう言ってくれたけど、本当の事なんて彼女にしか分からないし。もしも本当に嫌われたんだとしたら、俺はこれからどうやって生きていけばいいんだろうか…。
それでも懲りずにまた、今日も来てしまった。
いつもの場所にぐだっと座り、うちわで仰ぎながら空を眺めた。
宇宙人なら、あの子の家まで一瞬で行けちゃうのかな。
そんなストーカーチックな事まで考えて。
｢…あ！｣
突然どこからか声がして、思わず振り返った。
そこには、息を切らしたあの子が袋を2つ抱えながら立っていた。
｢きた…｣
｢こ、こんにちは…ッ｣
｢あっ！えっと、こんにちは…！｣
咄嗟に立ち上がり、深くお辞儀をした。
頭を上げると彼女は、肩を撫で下ろしながら｢よかった…｣と呟いた。
｢すいません。体調が悪くなってしまって、ずっと来れなくて…｣
｢あっ、いえ…！｣
｢あの、これ…遅くなったんですけど｣
彼女から渡されたのは、小さなランチバッグだった。
今日もパステルカラーの彼女には似合わない、黒のランチバッグ。
｢…あ、男性の好みがよく分からなくて、パッと見でこれにしたんですけど…｣
｢え、わざわざ俺のために買ってくれたの？｣
｢さすがに、私のじゃ小さすぎるので｣
彼女は俺の隣に腰かけ、｢食べましょ｣とにっこり笑った。
久々の彼女の笑顔に熱が上がってしまい、崩れるように俺もその場に腰かけた。
｢お口に合いますか？｣
｢Aさんが俺の為に作ってくれたんです。合わない訳がありません！ほら！めちゃくちゃうめー！｣
わざと言っているようにも聞こえるが、本当に彼女の手料理はどれも最高だった。
付き合う前からこんな幸せなもの頂いてしまって、バチが当たらないか心配になる程だった。
｢めちゃくちゃ美味しかったです！｣
｢すっごい嬉しいです｣
｢そう言えば体調は大丈夫ですか？｣
｢え？あ、ああ…まぁ、大丈夫です！｣
少し顔色が良くない気がするけど、本当に大丈夫かな。
咄嗟に彼女に近付き、間近で顔色を再確認する。
｢ふえ、えっと…｣
｢え？あっ…！｣
思ったよりも、近くに寄りすぎてしまった。
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作者名：L | 作成日時：2021年12月11日 10時
