山田くん、私といて本当に大丈夫なんですか? ページ18
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「いいんですか?!」
「山田くんさえよければ…」
Aさんは頬を赤らめながら恥ずかしそうにそう言った。
「も、もちろん…!Aさんさえよければぜひお願いします!」
彼女はぱあっと目を輝かせながら「ありがとうございます!」と深くお辞儀をしてくれた。
つられて俺も深く頭を下げると、彼女はまた声を出して笑ってくれた。
「じゃあ買ってきます!」
「え、お金…」
「私からのプレゼントって事にしてください」
小走りしながら彼女はレジ前の列に並んだ。
走り方もほんわかしていて可愛いな。
俺は一足先に店の外で待っていると、買い物を終えた彼女が小走りをしながら戻ってきた。
「お待たせしました!じゃあ山田くん、これ」
「お、ありがとう!Aさんはどこに付けるの?」
「私はスマホケースにつけようかなと…何もなくて寂しいので」
ラインのアイコンのお花とそっくりな白い小さな花が描かれたほんわかしたスマホケース。そこの脇に、先程購入したジンベイザメを付けた。
「可愛い…」
「その花って何?ラインのアイコンもそれだよね?」
「あ、これはカスミ草です。亡くなった母が一番好きだった花なんです」
「亡くなった…?」
どうやらAさんは1年前に母親を病気で亡くしているらしい。
花が大好きな人だったようで、彼女も母親が亡くなってから家のベランダで花を育てているらしい。
「母はこのカスミ草のように清楚で控えめで、本当に素敵な人でした」
「…そっくりですね。Aさんに」
「えっ、いや私は…!」
「いや…そっくりです。あなたにとってはそうじゃなくても、俺にとってのAさんはそのカスミ草のような素敵な人です」
Aさんは耳を赤らめながら「行きましょうか」と静かに言った。
表情は見えなかったが、声はどこか震えている気がした。
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水族館の後は近くのカフェでスイーツを食べ、また大学のあるいつもの駅へ戻ってきた。
夜7時。段々と薄暗くなってきた空と反対に、街はまだまだ元気いっぱいだった。
「何か食べに行きます?」
「え…あ、そうですね」
ここへ戻ってきてからAさんの様子がどこかおかしい。
やはり、母親の事以外にも何かを抱えているのは確かな気がする。
俺は彼女の手をギュッと握りしめ、「それとも帰りますか?」と尋ねてみた。
「帰りたく…はないです。でも…」
「でも?」
「 …山田くん、本当に私と居て大丈夫なんですか?」
「へ?」
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作者名:L | 作成日時:2021年12月11日 10時