「ラブソング」※あなたside ページ13
.
朝8時。朝ごはんを済ませ、お皿を洗い終えるとスマホを覗いた。
山田くんはどうやらやっと起きたようで、「おはようございます」とメッセージを入れてくれていた。
今日、そうか…今日だ。
カレンダーに赤ペンでしっかりチェックを入れてある今日。
やっと、やっと山田くんとのデート日。
楽しいかな。
山田くんとならきっと楽しいよね。
お母さんの写真を飾っただけの仏壇に手を合わせ、どうか見守ってくれるよう祈った。
少しテレビでも見る事にした。
適当にチャンネルを回し、ふと気になった女性の癌を特集した番組に目がいった。
「癌、かぁ」
そう言えば若い女性で1番多い癌って乳癌だったっけ。
乳癌とか子宮癌とか、全摘ってよく聞くけどさすがに若い時に全摘なんて嫌だよなぁ。
そんな事を考えながらテレビを見ていると、いつの間にやら午前9時を差し掛かっていた。
「あ、行かなきゃ」
慌ててテレビを消し、最終的な身支度を済ませると私は家を後にした。
.
両耳にイヤホンを付け、世界の音を遮断する。
今日は何を聞こうかなぁ。音楽アプリのライブラリを眺めていると、ふとこの間山田くんに話したあの曲の事を思い出した。
そうだ…あれにしよう。
サンボマスターの「ラブソング」。
最近の曲だと思っていた私に大恥をかかせたこの曲。
ラブソングと聞くと本来なら幸せなカップルを歌う歌詞が思い付くが、この曲は違う…それどころか大切な人を失った人の歌だと思った。
大切な人…最も厳密に言うならば、愛してる人なのかな。
愛と恋は違うって言うし、多分…いや、どうなんだろう。
山田くんなら…なんて言うんだろう。
「…!」
『今から家出ます!』
今からって、だいぶのんびりだなぁ。
思わず口角が吊り上がった。
.
電車がいつもの最寄り駅に停車し、私はそこで降りた。
駅を出るとすぐに、大学まで走るいつものバスに乗り換えて目的地まで向かった。
早く会いたいなぁ。
今頃どこにいるんだろうか。
彼のあの、優しい笑顔を頭の中に思い浮かべながら私は窓越しに流れるいつもの街を眺めていた。
.
行きましょう!デート!※あなたside→←「この人だ」※あなたside
14人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:L | 作成日時:2021年12月11日 10時