片想い5 ページ6
「え? 手塚君の部活?」
私は休み時間に途中したと同時に、葵ちゃんの元へ走った。
それは勿論、先ほど抱いていた疑問の答えを知るため。
でも素直に教えてくれる葵ちゃんでないことは、
小学校の時から明白だ。
現に口角を上げ、口の形を三日月に変えている。
しかし、だからこそ私が受け身になる必要があるのだ。
机に置かれた教科書の「数学」という
文字を指でなぞりながら、うん、と頷く。
「わたしゃあ、博識なのは自負しているけど、
情報屋じゃないんだぜ、お嬢さん」
「それって、先週始まってドラマの……
あぁ、なんだっけ、葵ちゃんが好きなアイドルのーー」
「うわああ!! やめろ!
テニス部、テニス部だよ!
私はあんま喋ったことないし、本人も無口なイメージかな」
脅すつもりはなかったが、
葵ちゃんはそう捉えてしまったらしい。
別にアイドルが好きっておかしいことじゃないと思うけどなぁ。
ドラマで主役を熱演する……名前は忘れちゃったけど、
子動物みたいに可愛らしい男の子。
あ、そう言えば菊丸くんに似てるっけ。
案外わかりやすいのかも、葵ちゃん。
わかりやすい照れ隠しに、わかりやすく消しカスを
集めてゴミ箱にポイっとする彼女。
そしてその前に通りかかった菊丸の姿を
ちゃっかり目で追っている。
……逆に今まで気づかなかった自分が凄いとさえ感じる。
丸わかりだよ、葵ちゃん……。
「あ、葵ちゃん。意外に表情にでやすいね」
「は、はい!?」
「う、ううん。なんでもないの。
あ、それで……テニス部って何時頃終わるんだろう?」
さぁ、と首をひねるジェスチャー。
情報通で有名な葵ちゃんも流石に知らないよね。
話題を変えようとした時、彼女は少し身を乗り出した。
「不二ー、あんたってテニス部だったよね?」
10人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ