片想い3 ページ4
菊丸くん。
葵ちゃんが好きな人と聞いても結びつかない、
可愛らしい男の子だ。
てっきり筋肉むきむきなプロレスラーな
ような人が好みだと思っていた。
菊丸くんは外見仕草は真逆の猫を思わせる。
語尾も「だにゃ〜」だし。
窓から見える姿にもつい気にかけてしまう。
だって親友の想い人だもの。
協力できることはしたいし、
同じクラスとはいえあまり接点がなかった故
これをきっかけに仲良くなれればという心持ちもあった。
そして彼を目で追ううちに気づいたことがある。
私の好きな人と、よくお話していること____
「菊丸。連絡事項があるのだが」
「なんだにゃ？」
まるでずっと年上のように感じる大人びた口調、
少し長めの艶のある黒髪、
レンズ越しに見える瞳。
一見スマートに見える体格もほどよく筋肉がついていて、
何かスポーツをしているのだろうと予想できた。
私は変態か……。
でもそれくらいの特徴を言ってしまうくらい、
心を奪われたのだと理解してほしい。
「あ……あの」
少し距離をとり、菊丸くんに別れを告げた彼に話しかける。
手塚国光、彼の名前はそういった。
教室前の廊下で、今まで感じたことのない緊張感で手が汗ばむ。
何を話題にすればいいのか。
そんなことまったく考えていなくて。
「なんだ？」と返ってきた返事に上手く対応できない。
二時間目の休み時間はあと五分もないのに。
「……？」
「あ、あのね。私、南Aっていうの。
図書委員で、手塚くんのことよく見てた。
……って、あぁえっと。それ深い意味はないんだよ？
私も手塚くんがよく借りる探偵もののシリーズが好きで……。
よかったら、お話したいなって」
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