195# 不運 ページ45
▽
真琴はパニック状態だった。早く理想のバストに戻さないと、と必死だったのかもしれない。しかし……まさかパッドとクラゲがくっついていたとは。考えるだけで恐ろしい。
ピリピリと電流が走る音と、彼女の叫び声。
「真琴さん！？」
「ブツゾウーーー！！」
驚いてすぐにはみんな動けない。それに、助けに入ろうにもクラゲだ。もし自分が刺されたら……もあったかもしれない。でも、早く処置をしないともっと大変なことになる。
真琴が脱力しながらも何とかクラゲを逃がしたのはナイス。私の視界の奥からは、声を聞いた研究生が集まってきていた。先に撮影を終えて海で遊んでいた襲名の人たち何人かも。
「どうしたの！？」
「真琴さんが、クラゲに刺された？かもしれなくて……」
「とりあえず海から出た方がいい。どなたかツバサさんに連絡をお願いします」
「分かった！」
ボートを波打ち際まで引き寄せてもらえば、才加さんが真琴を抱き上げてくれる。楚方は心配そうにその様子を見ていた。
あとは、
「空の入れ物とか無いですか？ 海水を入れて、患部を優しく洗い流してください。そして、もし本当に刺されたならピンセットか何かで針を抜く必要があります。素手では絶対触らないように。その手も刺されますよ」
「るーりん、詳しいの？」
「まあ。話は後です。誰か宿泊予定のホテルまでひとっ走り行って事情を説明し、冷やすものと軟膏を借りてきてください」
「軟膏？」
「リゾート地でクラゲが目撃される場合、こういうことは稀ではないはず。おくすりを常備していると思います」
私が言ってすぐに日除けテントへ戻る友歌。その背中を凪沙と織音も追いかけていった。あ、飲み物を注ぐ用に大きい紙コップがあったっけ。
ちなみにホテルへ向かってくれたのは、佐江さんと彼方さん。背中を見送りながら、ゆきりんさんとまゆゆさんが撮影スタッフの方々にちょっと待ってくれなどの声掛けをしてくださっているのを見つけた。あ、そこまで気が回ってなかった。後でお礼に行かなきゃ。
さて。ツバサさんが来るまで、あとできることは無いだろうか。才加さんに運ばれた真琴は、ビーチの日陰の方にあるデッキチェアに寝かす。水着から露出している箇所が赤くなり始めている。
「智恵理、使ってないタオルってまだある？ 二枚ぐらい欲しい」
「！ すぐ取ってくるね」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年10月21日 14時
