ぬくもり Ⅰ (ページ6)

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「よろしく…お願いします。」

「早く，荷物置いて。…はぁ。」

大袈裟にため息をつかれた俺は，慌てて荷物を運ぶ。

「ここが，あなたの部屋ね。」

長く使っていないのか，少しホコリっぽい部屋。

「あ，それと…。」

叔母さんは思い出したように，言う。

「高校の学費。うちも次高校生になる子どもいるから，うちからは出せないからね。あなたがバイトでもして，稼ぎなさい。」

「あ…そうです，か…。」

「当たり前じゃないの。あなたのお金のことまで頼らないでちょうだい。」

冷たく言い放ったあと，扉が閉められた。

外では，春が始まっている。

けれど，ホコリっぽいこの部屋は，
暗くて，空気もどこか冷たい。

・

夜…。

慣れない部屋で，独り過ごす。

晩ご飯は，静かでやけに食器の音が響いて，やけに悲しかった。
誰１人口を開かず，逃げ出したくなるくらい，静かだった。

ベッドにくるまって，お母さんのことを考える。
今日、お母さんとお別れをした，ということが，嘘のようだ。

もう，お母さんは…この世にいない…。

唯一俺の味方だったお母さんは…。

「ぅうっ…。」

隣の部屋にいる，叔母さんの息子で俺のいとこにあたる，二宮和也くんに，声が聞こえないように，
必死で声を押し殺して，泣いた。