ぬくもり Ⅰ (ページ30)

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「あんたの顔，赤いし目は潤んでるし，明らかにきつそうだったから，タイミング見計らってたんだけどな。ま，あんたが顔伏せた瞬間，近寄ってみたら，反応ないし。」

「…まつもとくんが…ここ，連れてきてくれたの?」

「まーな。今日は授業サボりたかった気分だし。」

感謝の気持ちと同時に，一抹の不安を覚える。

俺に良い態度とって，松本潤がいじめられることはないのだろうか。

「…?俺の顔なんかついてんの?」

じっと松本潤の顔を見つめていたら，怪訝な顔をされた。

「…なんでもない…。」

「ま，あんたは今日帰りな。相当熱高いぜ。」

「……え。」

「38.7℃だって。」

想像以上の高熱に，驚きながらも，
俺は頑なに首を振った。

「かえ…んない…。」

「は，なんでだよ。」

「だって……。」

言えない…
言えるわけない…

家に居場所はないってこと…。

帰ってきたら，叔母さんになにか言われる。

そして，すぐ学校に帰れって言われるか，バイトに行けって言われるか…。

で，また「美穂の子どもは…。」と言って，お母さんを貶してくる。

嫌だ…そんなの。

「ま，帰るの嫌ならずっとここいれば?どーせ授業もあと2時間だし。」

「……。」

「俺は，教室帰るわ。」

そして，松本潤がいなくなった途端。

「うあああ…ーーっ。」

枕に顔を埋めて，大声で泣いた。