ぬくもり Ⅰ (ページ1)

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「あなたはっ…わたしの，気持ち…考えたことある…っ!?」

「そんなの知るわけねぇだろっ。こっちだって毎日毎日働いてんだよっ。ちょっとくらいいいじゃねぇか。」

「ちょっとくらい…って。許されることじゃないのよ!?」

「俺がいないと子どもも養っていけないくせに…っ，口答えすんじゃねぇっっ!!」

バチンッ

大きな音がして，思わず目をつぶった。

小さく開いた扉から聞こえた声。
目を真っ赤にしたお母さんと，酒で酔って顔が真っ赤になったお父さん。

「っっ……!」

勢いのまま，ソファに崩れ落ちたお母さんは，
大声で泣き始めた。

「っ…うぅ，く…!」

「浮気ごときでごたごたうっせぇな。」

冷たい目で，お母さんを睨んだお父さんは，
ネクタイを外して，お母さんの背中に振りかざす。

ガタンッ

扉にあたった瞬間，大きな音がなった。

お父さんの目が，こちらに向く。

「や，やめてっ…お母さんを，いじめないで………っ!!」

「うるさいっ，てめぇはこいつの味方をすんのか?」

お父さんの拳が震える。そして，それは，そのまま俺の顔にとんでくる。

「やめて…っ。」

俺をかばったお母さんに，その拳は直撃した。

体の震えが止まらない。意識して止められる事なんて，できなかった。