*Bonds*16

３ ページ27

和也side


・


コツン，コツン

嫌なくらい響く，『誰か』の足音が。


すぐ，背後まで迫ってた。



ギュッと目をつぶって。

汗ばむ手を握りしめる。


そして…





「っ…。」


後ろを振り返ると。



「お前逃げんなよ。」

不気味な笑みを浮かべる，よく知った顔の人がいて。

殴られ続けた。

お腹を。


強く，強く……。



理由なんて，知らない。




ただ，本能のままに動いてるだけ。

俺がいる。だから，殴る。いじめる。


そうやって，いじめのループは無限になっていくんだろうな…。



苦しくて苦しくて。

だけど，あと少しでクランクアップ。


そう，自分に言い聞かせた。



あとちょっとだから。もう少し踏ん張れ。






だけど。

俺には，あと『もう少し』でさえも耐えられないくらい，限界だったから…。




「行っても大丈夫？」


こうやって，翔ちゃんの手を握りしめて，
彼の優しさにすがろうとしてるんだ。




少しびっくりしたような顔をした後，

「うん，いいよ。」


そう頷いた，翔ちゃんは。



今，どう思ってるんだろう。


・


車に乗り込んだ後。

翔ちゃんの，角張った手が，俺の額に触れた。



「へ……，え…？」

「んー，まだ熱いな。」

「……おれ。ねつ…あるの？」

「少しね。今日はお休みしよっか。」


なんでだろ。

同じ『人間』なのに。


翔ちゃんといたら，すごく安心する。

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