第百六十五話「祖父」 ページ5
ぼんやりとする。
目の前がぼやけてうつっていて、
はっきりしない。
A「……？」
ごしごしと、目をこする。
私はいつの間に立っていたのだろうか。
それより、ここはどこなのだろうか。
ぼんやりと、空をみてみれば、
視界はぼやけているというのに、真っ青なのがわかった。
そして、もう一度正面を見る。
自分の手には、なぜか刀。
しかも私の短剣二本だ。
A「……？」
もう一度目をこする。
やはり、私の手には短剣が二本。
なくなったはずの刀がどうしてだ。とぼんやり考えていると、
？？「なにをしておる、A！！」
少しかれた声がそこらじゅうに響き渡る。
どこかなつかしいその声は、私の目をはっきりとさせた。
ぼんやりとした背景が、霧からさめたようにきれいになって。
そこで、ようやくこの場所を知る。
どこだかわからない、森の中。
古びた家の、大きな庭。
響く鳥の鳴き声、揺れる葉のこすれる音。
風が澄んでいて、あたりは緑色で。
A「……ここは」
私の、…………いや、僕の育った家。
？？「聞いておるのか、A！」
覚えている、この人の顔。
笑ったところなど、見たこともない、この人の顔。
いっつも眉間にしわがよっていて、
今思えば、土方や風間に似ている。
僕を『男』として育てた、僕の祖父。
A「すみません、師匠」
僕は自然にニコリと笑ってもう一度刀を振る。
・
僕はこの人を師匠と呼んでいた。
武家育ちの、剣使い。
僕の生まれた町の剣使いの一二位を争うほどの腕を持つ、
僕が今持っている短剣の元・主だ。
・
師匠「今さら、怖気づいたかA。」
A「そんなことありえませんよ、師匠。
僕はこの家に、この短剣を引き継ぐために生まれてきたのですから」
師匠「よくわかっておる。流石、あのできそこないの息子とは違うな」
A「父上のことをあまり責めないでください。
あの人は、あれが一番様になっていますので」
僕は笑顔を崩さない。
それは、師匠のいう「できそこないの息子」
僕のいう「父上」
その人と関係がある。
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前田のさぶ(プロフ) - 初めてこんなに感動しました、とても切なくていいお話で涙が止まらなかったです。夢小説でこんなに感動したのは数年で初めてでした本当にありがとうございます！🥲お疲れ様です😌😌 (2022年8月31日 11時) (
レス) @page36 id: aeb32198b3 (このIDを非表示/違反報告)
美姫(プロフ) - 最高から一気に読ませていただきました。このような最高な作品を作ってくれてありがとうございます！本当に涙が止まりませんでした。本当にありがとうございます！何度でも読み返していきます。 (2021年7月16日 4時) (レス) id: ac5aee6225 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 最高でした…。 (2021年3月18日 22時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
彗羽(プロフ) - 泣きました。とてもしあわせな作品をありがとうございます。アニメにそうのではなく、オリジナルの展開がたくさんあって、本当に楽しく読ませていただきました。また、読みます。何度でも読みたくなるお話でした。 (2018年12月16日 13時) (レス) id: 3386061a83 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 最初から読ませていただきました！ほんとうに素晴らしい作品です！！ありがとうございました！ (2018年8月9日 17時) (レス) id: 534d1c515e (このIDを非表示/違反報告)
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