今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:257 hit
プロローグ
舞台は２０ХХ年。
愚かにも世界中が、もはや何度目か分からない大戦をしていたとき。
―日本国、首都東京。
ここに存在するとある政府直属の研究機関が、ある実験の途中、誤操作による大爆発をおこしてしまった。
この時の爆発によって日本全国に、いや世界中に飛び散ったウイルス、通称"陰"。
この事件がきっかけとなり、世界大戦は収束する。
大規模な同盟が結ばれ、再び世界は平和になったかに思えた…しかし、ここから暗い戦いが始まるのをその頃の人類はまだ知らなかった…
１.一人目の患者
―陰に感染すると人の中にある黒い"二つ目"の人格が呼び出され、その人は呑み込まれてしまう。
このウイルスに対抗できるのは対抗薬を打ち潜入者【ダイバー】の能力に目覚めた人のみ。
彼らは【ダイブ】という特殊な治療を行い陰を患った患者を完治させることが出来る。
これにより病が治った人は同じくダイバーになり陰を撃退する事ができるようになる。
ちなみにこれはあくまで"可能性"であり、必ずしも病が治るとは言えない。
更に副作用でダイバーの髪と目は違う色に変わってしまう。
ダイバーの能力には攻撃特化型と守備特化型があり…―
―――
白銀の肩寄り長い髪を鬱陶しそうに払い、彼は重厚な本をたたきつけるように閉じた。
透き通った水色の右目と橙色の左目をもつ少年の名は、ハヤミ・ハク。
常人には有り得ない美しい髪と目をもつハクは…
―【ダイバー】
人の心に潜り、病を治すもの。
そんな存在になった己が忌々しいように独り、溜め息を吐いた。
《コードNo.２ ハヤミ・ハク。出動命令。首都Ｂ地区に向かえ。》
心地よい静寂を切り裂くように無機質な電子音が鳴り響く。
彼は軽く嘆息し、
「…もう潜りたくない…」
苦しそうに呻く。"全人類の運命を背負う"にはあまりにも弱々しく…
―――
【ダイバー】―…そう呼ばれる人々は人類全てと比べるとあまりにも少ない。
だからボクたちは全人類の運命を背負って日々、世界中で活動をしなくてはいけない。
「…でもさ…」
弱々しく呟きボクは眉をひそめる。
ダイバーだって人間だ。普通の人と同じように心だってある。
当たり前じゃないか、だってボクらも人なんだから…
彼奴らは助けられるのが当然と思っている。
極めつけはその目線。ボクらを怪物のように忌々しげに、そんなボクらを嘲笑うかのように…
ボクだってこんな"能力" 欲しくもなかったさ
心に黒い何かがたまっていく、イメージの中の器はもう溢れそうだ。
こんな奴らばかりなら、人類がこれほどしょうもない生き物なら…こんな世界なんて、こんな奴らなんて
イラナインジャナイカ？
―ズキンッ
「…っ、…ふっ…」
本日何度目か分からない溜め息を吐く。
もう慣れてしまった偏頭痛の鋭い痛み。
―そういえば"溜め息を吐くと幸せが逃げる"って言うけど、
…溜め息をつかなかったら潰れてしまう人はどうなんだろう。
そんなくだらないことを考えながら、着慣れた白衣の裾を翻し、ボクは閉鎖的な空間を飛び出した。
―――
―攻撃特化型とは、ダイブ空間で現れるその人の真の人格の、攻撃タイプ。逆もあり、そちらは守備特化型と言われている。
人格がキツい方が攻撃、人格が柔らかいほうが守備。性格と一致する場合が多い傾向にあるが、必ずしも一致するとは限らない。
性格と人格が一致しない方が普段押さえられている分危険度が増す。
また、これらをすべてまとめて"性状"と呼ぶ。
更にこれらには当てはまらない…―
―――
「ハク〜遅いぜ〜？」
Ｂ地区についたボクを待っていたのは、黒い、先にいくほどに朱くなる髪を肩ほどの長さにのばした青年。
水色の左目と橙色の右目をもっている。
名前は…
「五月蠅い、ハイガミ・カイ。ボクは時間通りだ。むしろ貴様が早過ぎる、あとハクって呼ぶな。」
ハイガミ・カイ。
性格は最悪で超うざい。
今日の相棒が此奴だなんてツイてない。あぁ…ツイてない。
ボクがいらいらしているのが伝わったのか、はたまた無意識のうちにボクが文句を言っていたのか、カイは薄ら笑いを凍り付かせ不自然に咳払いをし、今回の患者の情報を喋り始めた。
―――
―今回の患者の名はクロツキ・リンネ。16歳だ。家族はいない。両親は生まれてすぐ交通事故で死んでいて、双子の弟も、先月の強盗事件で死んだ。
…能力不明、性状不明、本部でも何も分からないらしい。
―――
「成る程。わかった、それじゃあ早速"潜る"か…」
これでどうしてボクらが呼ばれたのか分かった。
能力も性状も不明の患者なんて、今まで一度もいなかった。
だから本部はボクとハイガミをぶつけるんだ。ダイバーのなかで一番確かな実力があると、確信しているから。認められるのは嬉しい気もしないでもない。
「よし、潜るぞ。」
―――
潜ると言っても水中な訳ではないから、特に装備はいらない。
ボクらは患者のいる、ウイルスを通さない特殊フィルターの集中治療室に向かった。
三重もある重たい金属の扉を押し開けると、そこには、沢山のチューブに繋がれた一人の少女が居た。
そのチューブの一つ―…手首の物を外し、自分の手首に繋ぐ。
「よし…」
これで準備は完了した。
ボクらは横に併設してあるベッドに横たわり、目を閉じる。
そのまま眠るように意識を手放していく。
―さあ、治療【オペ】を始めよう。
―――
ぼんやりとしている視界を頭を振ってやり過ごす。
薄い暗闇のなかに現れた景色は…
「ぎ、銀行!?」
辺り一面におびただしい数の死体が散乱している。
その中央辺りに、一人の少女が少年だったモノを抱いてしゃがみこんでいた。
「あれが…今回の患者…」
ハイガミが少し痛ましげに呟いた。
すると…少女が不意に顔を上げた。
どこからどうみても普通の女子高生だった。
―…髪と瞳の色を除いては。
少女の髪の色は血塗られたような赤紫で瞳は太陽のような黄色。
この少女は明らかにボクらと同じ、潜入者【ダイバー】に生るべき者だった。
舞台は２０ХХ年。
愚かにも世界中が、もはや何度目か分からない大戦をしていたとき。
―日本国、首都東京。
ここに存在するとある政府直属の研究機関が、ある実験の途中、誤操作による大爆発をおこしてしまった。
この時の爆発によって日本全国に、いや世界中に飛び散ったウイルス、通称"陰"。
この事件がきっかけとなり、世界大戦は収束する。
大規模な同盟が結ばれ、再び世界は平和になったかに思えた…しかし、ここから暗い戦いが始まるのをその頃の人類はまだ知らなかった…
１.一人目の患者
―陰に感染すると人の中にある黒い"二つ目"の人格が呼び出され、その人は呑み込まれてしまう。
このウイルスに対抗できるのは対抗薬を打ち潜入者【ダイバー】の能力に目覚めた人のみ。
彼らは【ダイブ】という特殊な治療を行い陰を患った患者を完治させることが出来る。
これにより病が治った人は同じくダイバーになり陰を撃退する事ができるようになる。
ちなみにこれはあくまで"可能性"であり、必ずしも病が治るとは言えない。
更に副作用でダイバーの髪と目は違う色に変わってしまう。
ダイバーの能力には攻撃特化型と守備特化型があり…―
―――
白銀の肩寄り長い髪を鬱陶しそうに払い、彼は重厚な本をたたきつけるように閉じた。
透き通った水色の右目と橙色の左目をもつ少年の名は、ハヤミ・ハク。
常人には有り得ない美しい髪と目をもつハクは…
―【ダイバー】
人の心に潜り、病を治すもの。
そんな存在になった己が忌々しいように独り、溜め息を吐いた。
《コードNo.２ ハヤミ・ハク。出動命令。首都Ｂ地区に向かえ。》
心地よい静寂を切り裂くように無機質な電子音が鳴り響く。
彼は軽く嘆息し、
「…もう潜りたくない…」
苦しそうに呻く。"全人類の運命を背負う"にはあまりにも弱々しく…
―――
【ダイバー】―…そう呼ばれる人々は人類全てと比べるとあまりにも少ない。
だからボクたちは全人類の運命を背負って日々、世界中で活動をしなくてはいけない。
「…でもさ…」
弱々しく呟きボクは眉をひそめる。
ダイバーだって人間だ。普通の人と同じように心だってある。
当たり前じゃないか、だってボクらも人なんだから…
彼奴らは助けられるのが当然と思っている。
極めつけはその目線。ボクらを怪物のように忌々しげに、そんなボクらを嘲笑うかのように…
ボクだってこんな"能力" 欲しくもなかったさ
心に黒い何かがたまっていく、イメージの中の器はもう溢れそうだ。
こんな奴らばかりなら、人類がこれほどしょうもない生き物なら…こんな世界なんて、こんな奴らなんて
イラナインジャナイカ？
―ズキンッ
「…っ、…ふっ…」
本日何度目か分からない溜め息を吐く。
もう慣れてしまった偏頭痛の鋭い痛み。
―そういえば"溜め息を吐くと幸せが逃げる"って言うけど、
…溜め息をつかなかったら潰れてしまう人はどうなんだろう。
そんなくだらないことを考えながら、着慣れた白衣の裾を翻し、ボクは閉鎖的な空間を飛び出した。
―――
―攻撃特化型とは、ダイブ空間で現れるその人の真の人格の、攻撃タイプ。逆もあり、そちらは守備特化型と言われている。
人格がキツい方が攻撃、人格が柔らかいほうが守備。性格と一致する場合が多い傾向にあるが、必ずしも一致するとは限らない。
性格と人格が一致しない方が普段押さえられている分危険度が増す。
また、これらをすべてまとめて"性状"と呼ぶ。
更にこれらには当てはまらない…―
―――
「ハク〜遅いぜ〜？」
Ｂ地区についたボクを待っていたのは、黒い、先にいくほどに朱くなる髪を肩ほどの長さにのばした青年。
水色の左目と橙色の右目をもっている。
名前は…
「五月蠅い、ハイガミ・カイ。ボクは時間通りだ。むしろ貴様が早過ぎる、あとハクって呼ぶな。」
ハイガミ・カイ。
性格は最悪で超うざい。
今日の相棒が此奴だなんてツイてない。あぁ…ツイてない。
ボクがいらいらしているのが伝わったのか、はたまた無意識のうちにボクが文句を言っていたのか、カイは薄ら笑いを凍り付かせ不自然に咳払いをし、今回の患者の情報を喋り始めた。
―――
―今回の患者の名はクロツキ・リンネ。16歳だ。家族はいない。両親は生まれてすぐ交通事故で死んでいて、双子の弟も、先月の強盗事件で死んだ。
…能力不明、性状不明、本部でも何も分からないらしい。
―――
「成る程。わかった、それじゃあ早速"潜る"か…」
これでどうしてボクらが呼ばれたのか分かった。
能力も性状も不明の患者なんて、今まで一度もいなかった。
だから本部はボクとハイガミをぶつけるんだ。ダイバーのなかで一番確かな実力があると、確信しているから。認められるのは嬉しい気もしないでもない。
「よし、潜るぞ。」
―――
潜ると言っても水中な訳ではないから、特に装備はいらない。
ボクらは患者のいる、ウイルスを通さない特殊フィルターの集中治療室に向かった。
三重もある重たい金属の扉を押し開けると、そこには、沢山のチューブに繋がれた一人の少女が居た。
そのチューブの一つ―…手首の物を外し、自分の手首に繋ぐ。
「よし…」
これで準備は完了した。
ボクらは横に併設してあるベッドに横たわり、目を閉じる。
そのまま眠るように意識を手放していく。
―さあ、治療【オペ】を始めよう。
―――
ぼんやりとしている視界を頭を振ってやり過ごす。
薄い暗闇のなかに現れた景色は…
「ぎ、銀行!?」
辺り一面におびただしい数の死体が散乱している。
その中央辺りに、一人の少女が少年だったモノを抱いてしゃがみこんでいた。
「あれが…今回の患者…」
ハイガミが少し痛ましげに呟いた。
すると…少女が不意に顔を上げた。
どこからどうみても普通の女子高生だった。
―…髪と瞳の色を除いては。
少女の髪の色は血塗られたような赤紫で瞳は太陽のような黄色。
この少女は明らかにボクらと同じ、潜入者【ダイバー】に生るべき者だった。
このホムペをお気に入り追加
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
この作品の元となった作品：小説作者に５０の質問！！ ver.○○
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような占いを簡単に作れます → 作成
作者名：芥 | 作成日時：2015年1月12日 17時
