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はじめまして、こんにちは。あきです。

今回は銀土パロです。

楽しんでいただければ幸いです。

「いきつけの店」というのは、三日間通い続ければそうなるらしい。
向こうもこちらを馴染みの客として覚えてくれる。
気に入った店には三日間通え。いつもその時の気分で店を選んでいる自分には、縁のないことだと思っていた。
…こうなるまで。



「いらっしゃいませ。…あぁ、今日も来てくれたんだ」
「……どうも」


なにを、やっているんだろう。
目の前にいる男の笑顔を少し見て、土方は小さくため息をついた。
土方は何の変哲もない会社員だ。
二十代半ば、独身、マンションに一人暮らし。
何処にでもいる、大勢の中の一人。
仕事ばかりにかまけて、趣味も恋も随分としていなかった。
そんな自分の心にある日突然転がり込んできたのは、鈍く輝く、銀色。


「今日は?何飲む?」
「…モヒートベースで、辛めの」
「かしこまりました」


口許だけに笑みを湛え、粗雑な口調とは裏腹に綺麗で繊細な指の動きを見せるこの男こそが、その銀色だった。





ここは彼の店。
三日前、仕事帰りに一杯飲んでいこうと視線を彷徨わせていたところに、このバーの看板が目に入った。
地下へと続く階段を降り、暖色のうす暗い店内に足を踏み入れ、視線を上げる。
そのとき目に飛び込んできた世界に、土方は息をすることを忘れた。
カウンターの向こう。こちらを見て微笑む男は、銀色だった。白いシャツ、黒のベスト、シェイカーを握る指。
どれも様になっていて綺麗だったけど、その銀色の髪は、それ以上に土方の目を惹きつけて止まなかった。


『いらっしゃいませ。…何突っ立ってんの。入れよ』


その後に聞こえてきた外見とはかけ離れた馴れ馴れしい言葉に、呆気にとられてしまったことも事実だけど。







「ほい、お待たせ」


自分に向けられた声と、目の前に差し出されたグラスに、土方はハッとして意識を浮上させる。
コースターの上には、見た目も鮮やかなカクテルが置かれていた。
目線は合わせずに、グラスを手にとって一口飲む。
さわやかな、けれど辛めのジンジャーが後から口の中を刺激して、なんとも、


「…うまい」


思わず顔をあげてそう呟く。
すると目の前にいた銀色がふと笑った。


「そりゃよかった」
「………っ」


無意識とはいえ、視線が合ってしまった。
細められた紅い瞳がこちらを見ているのに耐えられなくて、土方はすぐに視線を逸らす。
どうして。どうして自分の心臓は、こんなに煩くなるのだろう。
初めてこの店を訪れてから、初めてこの男と出逢ってから、自分はどこかおかしい。
大体にして、同じ店に三日間も連続で訪れるなど、今までの自分には無かったことなのに。
それに、こちらからしたら三回目で馴染みの店と呼べるくらいにはなっているかもしれないけれど、向こうからしてみれば「まだ」三回目で、ただの客でしかないのだ。
そう、そんなものだ。
自己完結した途端、土方の中でなにか落胆とも呼べるような感覚が胸の中を這いまわった。


「(そうだ、俺がここに通ったのも、なんとなくだ。最近いいなと思える店が無かったから…)」


なぜか言い訳がましい考え方なのも、気付かないふりをする。
このなんとも言い難い虚しさのようなものも、知らない。
この酒を飲んだら帰ろう。ここには、また気まぐれで来れば…


「なぁ、土方くん」


不意打ちだった。
考える頭をゆるく振ってグラスに手を伸ばそうとしたとき、その声が、銀色が。


「っなんで、なんで名前しって……っ」


ガタンと、椅子を揺らしてしまうくらいに身体を仰け反らせて、土方は小さく叫んだ。
そんな、だって、知っているはずがない。
そもそも、なんでこの男はまだ自分の目の前にいるのだ。


「えー。オメーが教えてくれたんじゃん。昨日来たときに。酔ってて覚えてねェの?」
「き…のう…って…」


じゃあ、この男は、自分が通っていたことを覚えていた?


「今日も来てくれたんだ…って言っただろ?さっき」
「あ……」


土方の心を見透かしたように、銀色の男はクスクスと笑う。
覚えていてくれた。知っていてくれた。自分を、見てくれていた。
言いようのない感情が込み上げてきて、土方は自分の顔に熱が集まるのを感じる。
なんでこんなに恥ずかしい。どうしてこんなにも、嬉しい。


「は…、かーわい」
「?いま、なんか言ったか」
「いや、なーんも?それよりさ、毎日来てくれるなんて、俺のこと、好きになっちゃった?」


にやりと、バーテンダーとは思えないニヒルな笑みを浮かべて男がのたまう。


「ばっ…かじゃねェのか!俺はこの店の雰囲気が気に入っただけだ!」
「ふぅん。ま、それも嬉しいけどな」


さっきまでのしおらしい思考は完璧に吹っ飛んでいた。
浮世離れした外見をしてるくせに、口を開くと全てが台無しだ。
間延びした、やる気のない、雑な言葉。
さっきまで自分の脳内を占めていたのがこの男だと思うと、なんだか馬鹿らしくて頭にくる。
悔しくて、土方は背もたれから背中を離すと、さっきとは逆に男に詰め寄るようにして身を乗り出した。


「…俺だけ名前知られてんのは不公平だろ。お前も、教えろ」


自分でもなぜここまでムキになるのか分からない。
だが一つ言えるのは、この男に良いようにされたままではいられない、ということだ。
さっきまで見ようともしなかった男の鈍く光る瞳をまっすぐに見つめ、視線を逸らさない。
高鳴る胸の鼓動は、この際無視することにする。
すると銀色の男はなぜか嬉しそうに、そして瞳に熱っぽい色を灯しながら、土方との距離をさらに縮め、言った。


「…坂田銀時。ぎんときって…呼んでみな?」



END









…バーテンじゃなくてもよくね?っていうツッコミは新八風にお願いします←

はじめてはやっぱり銀土で。
この二人は萌え要素をつめこんだ最高のバカップルです、ハイ。
銀さんはSで、土方は無自覚Mで。
くっ付くべくしてくっ付いたとしかいいようがない。
続くかは…わかりません。
要望があればもしかしたら。
こんな風に駄文を思いついたときにアップいていくので、もしよろしければ。

byあき

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かめさん - 素敵です(^∇^)続き書いて下さい(^∇^) (2014年7月4日 0時) (レス) id: 97f9be00b5 (このIDを非表示/違反報告)
雲月 - かっ…可愛いッ!! (2014年2月22日 10時) (レス) id: 7b8db0938a (このIDを非表示/違反報告)
土方@菜月(プロフ) - 銀土最高!! (2013年8月13日 17時) (レス) id: 9c3b60fd16 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あき | 作成日時:2013年7月26日 18時

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