小説の溜め場

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ハイキュー及川さんと女バレの主将ちゃん
ぐだぐだてでごめんなさい

『女の子はみんなお姫様』

今日は主将会議の日。

「及川」

俺の名前を呼ぶその声を聞きたいから、今日も俺は忘れていたフリをする。

「今日主将会議だっつの、忘れんな」
「あ、そーだっけ。俺行かないと。じゃーね」

さっきまで話していた女の子達に手を振って、彼女の隣を歩く。
彼女はさっきまで自分が話していた子達をジーッと見ていた。

「どうしたのさ、らしくもなく静かで」
「別に」
「別にじゃないね、絶対何かあるでしょ」
「ない」
「ある」

ちょっとした押し問答のあと、彼女は「絶対に笑わないでよ」と念押ししてから話し始めた。

「私はいつから道を踏みはずしたのかな、と」
「え、何いきなり」
「いつから私はゴリラになってしまったのかな」
「…… いきなりだね」

彼女のことをゴリラと呼ぶのは、自分しかいない。
怒っているのだろうか。

「私だって、お姫様に憧れたことぐらいあんの。かわいいドレス着て、髪のばして、いつかカッコイイ王子様が来てくれるんだって思ってた」
「それはそれは……」
「お姫様は無理だけど、でも、かわいくいたいって思ってたんだよね。……今あんたが話してた子達みたいに。
オシャレが似合って、かわいくて、フワフワした感じの女の子みたいに、さ。でも私は今筋肉ついて全然か弱くないし、ゴリラに昇格してるし」

いつからお姫様どころか人ですらなくなったんだろー、と言う彼女を、上から見おろす。

確かに彼女の髪は短いし、力もあるし、強気な性格だ。フワフワとした女の子ではない。

でも。

「お前は今の自分が嫌いなの？」
「へ？」
「今のお前から今お前が嫌だと思ってるトコとったら何が残るの？」
「そこまで言う？」

どんどん顔を険しくさせる彼女に臆せず、淡々と言葉を続ける。
でもその心中は、ものすごくイラついている。

「髪が短いのは、バレーする時にジャマにならないようにだろ。筋肉だってバレーしてるからだろ。お前が否定したいものは、バレーの否定に繋がるんだよ。
バレーがあるから今のお前になったんじゃん。それが嫌なの？」

嫌だと。バレーが嫌だとは言わせない。
バレーのせいだとは言わせない。

バレーをしてる時のお前が好きなのに。
今のお前が好きなのに。

「嫌なわけないじゃん」

すぐに、はっきりとした口調で答えが返ってきた。

「私、バレーボール好きだから。嫌いになんてならないから」
「そう」
「私に筋肉がさらについて、もっとゴリラになっても。その理由がバレーでも、嫌いにはならない」

あたり前じゃん、と彼女が笑う。

ああ、分かってないな。
フワフワしている女の子がかわいいと決まっているわけじゃないことを。
だって彼女は、ものすごくかわいい。

「ねえ、知ってた？女の子は誰もがお姫様になれるんだよ。
見る人によっては、その子が一番かわいいお姫様なんだよ」

俺からしたら、お前は十分お姫様なんだけどね。

「あー、誰か私をお姫様として見てくんないかなぁ」
「ここにかっこいー王子様がいるけど？」
「ハンガーの間違いだろ」
「ゴリラに言われたくないね」

大丈夫。
俺がお前をしっかりお姫様にしてあげるから。

だからそれまで、ゴリラのままでいて。

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