かわいい。
いや、そんな拙い言葉で表していいのか。
青いドレスを身に纏い、ソファに座って少し頬を赤らめているクラピカを見て素直にそう思った。
また恋をした、そんな感覚。
「だ、大丈夫か・・・? 変ではないか?」
「い、いや! 似合ってるって!」
似合ってるなんてもんじゃない。
全体的に露出が少ないながらも出ている白い肩。ひざより下はいつも隠れていたからこんなに細いだなんて知らなかった。
今更ながらこの「二人きり」という状況にどぎまぎしてしまう。
「そうだ、えーと、ケーキあるからさ、食べようぜ」
小さめの冷蔵庫から白い箱を出す。
「イチゴのショートケーキなんだけど、いいよね?」
「大丈夫だ。ケーキまですまないな」
皿とフォークを用意して、ケーキをよそろうとしたところで。
「あ、紅茶・・・」
飲み物のことは考えてなかった。
どっか行って買ってこようかどうしようか。
「紅茶なら、駅前で買って来たものがあるのだが・・・」
そう言ってクラピカは脇にある鞄からおもむろに「午後ティー」を出した。
「え、いいの?」
こくり、と頷く。
――だから、動くなって・・・。いちいち良い匂いがするんだからさ。
心の中で文句を言うと「午後ティー(ストレート)」を見た。
全然減っていない。飲みかけと言うか一口口づけただけみたいだ。
(これは間接キス・・・とは呼べないな)
コップに「午後ティー」を注ぎながらそう思う。
ゴンと食べてる時はこんなこと考えないのにな・・・。
「「いただきます」」
カチャ、カチャ。
食器同士がぶつかる小さな音だけが響く。
この静けさを打ち破ろうとテレビのスイッチを入れる。
『おー! ヒソカ選手また不戦敗!! これは戦う気すらしなかったということでしょうか!?』
試合の中継。
テンションの高い実況の声。
クラピカが一瞬固まる。
「・・・ヒソカもここに居るのか?」
「うん、そうなんだよねー」
軽く話を流そうとするが、クラピカはケーキを食べる手を止めたままだった。
「・・・何かあったの?」
「いや、どうせなら会った方が良いかと思ったのだが」
「アンタその格好で会ったら襲われるぜ」
「このドレスが何かまずいのか? 襲われる理由など思い当たらないのだが・・・」
「あー・・・別に」
――フツーこの文脈で「襲われる」ってあっちだろ! まさか「攻撃される」の方だと思ってんのか?
いまだに首をかしげるクラピカにキルアは告げる。
「犯 されるってこと」
ヒソカがクラピカを・・・考えただけで脚が嫌悪感でいっぱいになったが、それよりもクラピカの反応の方が面白かった。
再び固まり、じょじょに顔が赤くなっていく。
「んなっ・・・いくらヒソカでも私を・・・おか・・・襲うなんて悪趣味すぎるだろう!」
この人、自分が美人だって自覚ないのかな・・・。
「悪りぃ悪りぃ」
「まったく、質の悪い冗談だ」
いや冗談とかではなくその可能性は十分にあるんだけど。
まぁクラピカのドレス姿を誰にも見せる気はないし。
「・・・どうした?」
既に自分の分のケーキを食べ終わったキルアは、クラピカがなかなかケーキを食べないのを見て声をかけた。
「いや、量が多くてな・・・キルアは甘いものが好きなのだろう? 食べてくれないか?」
「うん、いいぜ」
逆に断る理由なんてない。
(・・・? そういや今オレが使ってるのってクラピカのフォークじゃ)
典型的な間接キスだった。
ゴンと食べてる時はそんなこと思わないのにな・・・。
・
食事の後片付けも終わり、残りの「午後ティー」を飲みながら談笑する。
今度は、クラピカの隣に座っている。
「ちょっと、大事な話があるんだけどさ」
「何だ?」
――もう話を切り出してしまった。
後戻りはできない。言うしかない。
オレがクラピカのことこんなに好きなのに、クラピカがオレのことを嫌いなわけがない!
無理やり自分を落ち着かせて、口を開く。
「オレ、前からアンタのこと――好きだ」
長い沈黙。
青い瞳の奥が揺れている。
「それは・・・どういう意味での?」
まずそこからかよ。
少し和む。
「ハグしたいとか、チューしたいとか」
「なっ・・・!? それは恋仲になった者へと言う事であろう!」
「じゃあ、付き合ってよ」
顔の赤みが首や耳まで広がっていくクラピカを見て、さっきまでの緊張など嘘のようにだんだんと楽しくなってきた。
「・・・私は旅団と対峙するつもりだ」
「うん」
「私の近くに居ることで、キルアに危害が加わるかもしれない」
・・・なんだ、そんなことか。
「別にいいぜ。ハンターって時点で相当危ない目に遭うだろうし」
「ほ、本当に大丈夫か?」
「だってオレ、クラピカのこと好きだもん」
クラピカの目をじーっと見つめる。
赤い色が、瞳の奥からちらっとこっちを覗いた。
「な、なら・・・私で良ければ・・・」
次に質問攻めにするのはキルアだった。
「え、マジで? オレと付き合ってくれるの?」
「あぁ」
「手握ったりしていい?」
「それぐらいなら」
「抱きついたりとか」
「う、うむ」
「キ、キスは?」
「・・・と、時々なら」
「じゃあじゃあ、そ、それ以上は・・・?」
「それ以上、とは?」
この鈍感な恋人に喜びに似た苛立ちを覚えながらキルアは言う。
「夜の営み」
クラピカはこれでもかというぐらい真っ赤に染まる。
あ、また目がちょっとだけ赤くなった。
「お前は思ったより変態だったのだな」
これでも言葉は選んだつもりなのに。
喉が渇いたので「午後ティー」を口に運ぶ。
「まぁ・・・その内に・・・」
飲んでいた「午後ティー」を吹き出しそうになった。
「え!? 今やっちゃう!?」
もう混乱しすぎて思っていることと言っていることが支離滅裂だった。
「ば、馬鹿者! 落ち着け! お前も私も未成年だろう!」
クラピカも「午後ティー」を飲む。
落ち着きを取り戻したのか、肌は元の抜けるような白さになっている。
「ゴメン・・・けどさ」
ソファの上に膝立ちをし、クラピカの肩に手を置く。
上目遣いも可愛いな。
「これは、さっき『時々なら』って言ってたよね?」
クラピカの目に手を乗せる。
そして、桜色の唇に――
「ん・・・・・・」
初めてのキスの味も、感触も、時間も――全て忘れた。
だけど、終わった後の揺れる緋い目は忘れられない。
骨董品とか芸術品とか興味ないけど――世界七大美色といわれる理由が分かったような気がした。
でも、もうオレのもんだ。誰にもモノのように扱わせない。
――オレ、結構独占欲強いからさ。
「・・・あ」
まだ言ってないことがあった。
ぼうっとオレを見つめる緋い瞳に向かって。
「誕生日、おめでとう」
・
――お前の欲しい物は何だ?
――え、どうしたの急に。
――いや、誕生日に何を贈ればいいかと。
――チョコロボ君・・・あ。
――チョコロボ君?
――やっぱそれより欲しいのが。
――何だ?
――物というより・・・クラピカ。クラピカが欲しい。
――な・・・そんなものでいいなら、いくらでも。
――マジ? 子供は三人ぐらい欲しい。
――お前は気が早い!
・
闇同士でも構わない。
マイナス×マイナスがプラスになるように、
一生暗い世界から抜け出せなくても、
二人でいるときは幸せだから。
.。.end .。.
・た、楽しんでいただけましたでしょうか?←gkbr
・こんな駄文を読んで下さりありがとうございました。
・やっぱキルクラいいですね。キルアの誕生日に続編書こうかn((
・最後に・・・クラピカお誕生日おめでとう!
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月ノ宮鈴音(プロフ) - どこかで見たことあるような気がする……? (2015年8月13日 21時) (レス) id: 98fd0d849e (このIDを非表示/違反報告)
ばにゃにゃ☆シュガリティ@たぶんスランプ中←(プロフ) - 玲奈さん» 返信だいぶ遅れてすみません、私もクラピカ好きです大好きです!((閲覧&コメありがとうございました。 (2014年9月10日 20時) (レス) id: 179f3e0353 (このIDを非表示/違反報告)
ばにゃにゃ☆シュガリティ@たぶんスランプ中←(プロフ) - めぐみさん» 返信だいぶ遅れてすみません、少しでもそう思っていただけて良かったです♪ 閲覧&コメありがとうございました。 (2014年9月10日 20時) (レス) id: 179f3e0353 (このIDを非表示/違反報告)
玲奈 - クラピカ誕生日おめでとう大好きずっと大好きだよ~!! (2014年4月4日 23時) (レス) id: dbc63ee47c (このIDを非表示/違反報告)
めぐみ(プロフ) - 面白かったです!! (2014年4月4日 22時) (レス) id: 17386529fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ばにゃにゃ☆シュガリティ | 作成日時:2014年4月4日 0時