さいごのまたね。【2j3j】

人を殺した、と。
突然来てそう言ったお前は、
乾いた笑みを浮かべていた。
意味がわからん。一体全体なにを言っているんだこの後輩は。
そんな乾いた笑みのこいつとは対照的に、外は雨で塗られていた。
夏から逃げてきたみたいに、汗をかいていた。
冬から逃げてきたみたいに、震えていた。
汗なのか雨水なのか、寒さなのか恐怖なのか。なんてそんなものは俺にはわからない。
水も滴るいい男ってか？
まぁ、いい男だよ笑

あいつかと思った。
心当たりがあった。



やんなって、突き飛ばしたら打ちどころが悪かったっぽい。
みんなに迷惑なんてかけられないし、どっか遠くで1人で死んでくるよ。
またね。



なんて珍しく感情的なお前を1人にはできなくて、
こいつのまたねをさいごになんてしたくなくて。



俺も連れてけよ、何勝手に死のうとしてんの、後輩のくせに。笑

吸血鬼って死ねるの？

殺されはできないけど、しぬことならできるっしょ？しらんけど。
準備するから待て



最低限の荷物、ついでにゲーム機も持って。
あの3人で撮ったあの写真なんていらなくて。
数百年の記憶も置いて、壊していこうか。

人間を殺した人間と人間にはなれない吸血鬼の物語か。笑
家族も相方も、何もかも捨てて。
なぜか、生意気な後輩と一緒に死のうと思った。
遠くの誰もいない場所で、2人で死のうと思った。
人殺しなんてたくさん出会ってきた。
そりゃあ、数百年生きていれば人なんか殺してなんぼの人間と出会ってきた。
だからきっと、おまえは何も悪くないよ。
そして俺も何も悪くないし笑

おまえとはどこか嫌な共通点で繋がっているような気がする。
いつも通り生意気な後輩を見て、安心していたのかもしれない。
線路上を2人で歩いた。
＿＿＿のマップみたいだなとか言い合いながら。
ゲームをするみたいに金を盗んで逃げた。
ゲームみたいに、セーブもコンティニューもリスタートもできないけど、
どこまででも行けると思った。



もう怖いもんなんてねぇなーーーー！！！！

怖いものなんてあったの？

あーー、、なんだ？

知らないよ笑

まぁ今更どうでもいいかー。どうせ俺らは社会不適合者のニートですよーーだ！！！

一緒にしないでよ、笑笑
あの人みたいな、主人公みたいな人なら、こんな俺たちでも仲間にはしてくれるかなぁ？

はぁー？無理があるだろ、、現実見ろよ今更幸せな人生なんて送れるはずねぇし。もう戻れねぇよ。

それもそうか、、。



脱水症状で揺れる視界となにかのうるさい鳴き声にイライラしていた気がする。
そして、バカみたいに、「青春」を謳歌していた気がする。

ふと俺が持ってきたナイフを手にした生意気な後輩は、



あの日から、今まで、そばにいてくれてありがとう。
だからもういいよ、死ぬのは俺1人でいいよ、



またね。葛葉。



皮肉にも顔の良いお前の首から流れる血は、
綺麗な色白のベースに映える赤で、
映画のワンシーンか、白昼夢を見ているような気がした。
現実から逃げたくなるくらい、

綺麗だった。

気づいたら俺は捕まっていて、
お前だけが何処にも見つからなくて、何処にもいなかった。
俺は今でもお前を探しているのかもしれない。

季節は何周もして、あの日の非日常を感じることなんてなくなっていた。
日常は何も変わらなかった。
別にいなくても、日常も明日も変わらなかったのかもしれない。
でも、



ここにはお前が必要だったよ。
またね。黛。

……さいごの、またね。でした。




もうないかぁ、、、、！！また、は。