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Twitter創作企画、悪魔と呼ばれた騎士団のフォンセの過去のお話です。

誤字、脱字などありましたらご指摘お願いします。





辺り一面に草花が広がっていた。遠い森を見れば木々が揺れているのに、ここでは草花も風を感じていない。

その光景はまるで時間を止めているかのようだった。そう、あの時から止まっていた。

皮肉なものだと思う。僕の時間は止まってなどいないんだから……





僕は遠い昔に、今の屋敷よりもう少し大きな屋敷に住んでいた。

使用人も何人かいて、家族がいない僕にとっては家族同然だった。

その中でも、特に家族に近いものと感じていたのは執事のカイ。いわゆる幼なじみという奴で、幼い頃からずっと一緒だった。

けれど。

ある日、買い物から帰ってきたら屋敷が火に包まれていた。
辺りに使用人の姿はない。逃げているなら、そこら辺にいるだろうに。

まさか、まだ屋敷に? そう思い火を避けながら屋敷を探したが、使用人の姿はやはり無い。


「……フォンセ、様……」


まだ探してない部屋を探し続け、執事室に入ったところで聞き覚えのある声がした。

声のする方を見れば、うつ伏せで倒れているカイの姿。カイの下には血の海が広がっていて、もう助からないほどの致命傷だということは明確だった。

急いでカイの元へ行き、その体を抱き抱える。


「カイ……!」
「フォンセ、様……ご無事で何よりです……」
「しゃべらないでおくれ……!」
「……いいえ、喋らせてください。フォンセ様が、留守にしている間……数10人の団体に、襲われました……使用人は全員やられ、私もこのざまです……申し訳ありません……」


そう、カイは肩で息をしながらこの屋敷であったことを説明する。


「謝る必要なんてないよ、君は良くやってくれたから……!」
「はは……なら、良かったです……」


カイの体は、時間が経つ事にどんどん冷たくなっていく。


「フォンセ様……今まで、ありがとうございました……とても、幸せでしたよ……」


そしてその言葉を最後に、カイは僕の腕の中で息を引き取った。

――――許せなかった。

カイを、使用人達を殺した団体が憎くて。もう喋れない、触れられない事がとてつもなく悲しくて。

だから、僕は禁術を使った。

大きな代償と引き換えに、何でも願いが叶うという禁術を。

僕は願った。


「カイたちを殺した団体を滅ぼしたい。団体の家族、恋人、友人、知り合い……一人残らず滅ぼしたい」


と。そして、何千年もの寿命と引き換えにその願いは叶った。





「やあ、こんにちは」


魔界の森の奥深く、燃えた屋敷があった場所に僕は来ていた。

僕は屋敷が完全に燃えた後ここだけ魔法で時間を止め、カイたちのお墓を作った。

屋敷の周りを囲んでいた川も、自然も、全て屋敷が燃えた後のそのまま。


「――――今思えば、君達は復讐なんて望んでいなかったんだろうね」


そんな事を呟きながら、カイたちのお墓に花を添える。

カイたちは優しすぎて、自分達の為に僕の寿命が失われたことに罪悪感を感じていそうだから。自意識過剰かもしれないけど。


「大丈夫だよ。僕は後悔してないし、君達のせいだとも思ってないから」


そう安心させるような口調で言い、空を仰ぐ。

僕の寿命は後一年もない。だから、その時が来るまでは。


「騎士団の皆と、沢山思い出を作ろう」


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作者名:薄桜 | 作成日時:2018年5月4日 22時

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