生温い風が通り、どこか不安を呼ぶ鈍色の空。おや、なにやら彼らの様子がおかしいようです。
少し覗いていきませんか？__
＊キャラクター紹介＊
・カーリア
・ウォルター
・レイティ
・スタンフォード
・シスタードレティ
前編、後編となっています。
後から増やしていく予定です！
10種類の結果パターン
逃がさない - 2024年5月5日
👓ウォルター ( 2 )
幼少期を過ごした村を離れ、ルグソワに住み始めてから何年が経ったか。
12歳の誕生日を迎えた頃、母親が亡くなって父は日中働くようになって前まであった会話も少なくなった。
もはや地獄だった。
おそらく父は私に無関心で興味も無いだろう。
家にいても外にいても私の居場所はどこにもないような気がしてならなかった。
寒さが入り込む月に、今までの地獄を塗り替える出来事が起きた。
窓辺から見えたあの姿はまさしく、ウォルターだ。
彼がなぜそこにいるのかは分からないが、どうしても会いたくて部屋を飛び出た。
玄関にまで来た時、ふと思い出す。
私は彼に会う資格があるのか？
何も言わず故郷を離れ、叶うはずのない願望を押し付けた私に、彼は怒っているはずだ。
そう思うと、ドアノブにまで届いた手は自然と引っ込んだ。
ドンドンドン、
「え…？」
突然、扉から大きな音が聞こえた。
誰かが叩いている。
父でもないし、配達員のものでもない。なら誰だ？
ドンドン、ドンドン！！
音は激しさを増すばかりで、私は恐怖した。
「おい、いるんだろ」
なぜ、なぜあの声が
ドアの先に、
「俺が気づかないと思ってたのか？約束したろ、迎えに行くって。
それなのに何も言わず行きやがって。おい、聞いてんだろ、さっさと開けろ。」
知っている、忘れるはずがないあの声。
昔は自然と安心した存在のはずなのに、なぜ今はこんなにも恐ろしいんだろう。
ガンッ！！！
何かが壊れる音がして、体が跳ね上がる。
鍵がかかっていたはずのドアがガチャリと開けられる。
その光景を、私はただ見ていることしかできなかった。
抵抗したら確実にマズイ気がして、体を小さくして恐怖していた。
扉から覗かせるその姿に、私は悲鳴を上げそうになった。
「よぉ、久しぶりだな。」
地獄に差し伸べられた光もまた、別の地獄への入り口であると理解した。
あんなにも穏やかで、優しかった彼の面影は何処にいったというのか。
目の前の人物は本当にウォルターなのだろうか。
白いシャツに飛び散った赤い色が目に映る。
私は過去の行いを酷く後悔した。
「言いたいことは山ほどあるがな、俺はそこまで短気じゃねぇんだ。久しぶりに会えた訳だしな。
約束通り、迎えに来たぜ。」
ねぇウォルター。その手に持ってるヒトは、なに？
end.
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作者名：マツ屋 | 作成日時：2022年10月17日 8時
