あなたの意思に反することになっても

13種類の結果パターン

さようなら - 2024年5月11日

【西行寺幽々子】
※生前幽々子



彼女と私が出会ったのは、とても幼い頃。1人で歌を詠んでいたら、彼女が拍手をしながら褒めてくれたことだった。名前は忘れもしない、YOUという脳裏にやけに刻みついた。
感想のみならず、推敲にも手伝ってくれた。それがとても嬉しくて、何度も無意味に突撃した覚えがある。それでも、嫌な顔一つもせずに付き合ってくれた。その優しさに漬け込み、時間を無意味に増やしていった。

「えっ、本当なの……？」

春になって間も無い昼のある日、彼女は親の決めた相手と結婚すると言った。彼女も私と同じ貴族の立ち位置。上等な相手と結婚することが、この立場の女の役目。悲しいけど、それは仕方のないこと。

「ねえ、それって本当にしたいことなの？」

尋ねても、ただただにこにこしているだけ。いつも通り笑ってる、でも何故だかいつもと見る笑顔と被らないように見える。どこか、空っぽに感じた。

「無理する必要は無いの、嫌なら嫌って言ってちょうだい？今は私と貴女しかいないのだから」

頑なに笑顔を崩さなかったけど、根気よく尋ねれば顔を歪ませた。ぼろぼろと泣き出した。吐露するように、嫌だと首を横に振って取り乱していた。

「……そう、そうね。打ち明けてくれてありがとう」

本当は嬉しくて堪らなかった。だって、私に心を打ち明けてくれただけじゃなくて相手との結婚も拒んでいると分かったから。嬉しい、だったら、このままでいたいじゃない？

「ねえ、逃げましょ？私も遅かれ早かれ、そんなことを言われるの。だから、2人自由に暮らせる場所に行きましょう？」

アテはある。数年前に知り合った、夕暮れの日差しを受ける稲のような金色に輝く髪を持つ少女が教えてくれた。その場所なら、幸せに暮らせると確信的な想いがあった。
後は、この血を求める桜を使えば良い。彼女が頷いてくれれば、何もかも上手く事が進む。

「貴女もそう想ってくれているのね！ああ、嬉しいわ。今から行きましょう？」

昂る気持ちを感じながら、彼女の手を引きお化け桜に立つ。そして、隠し持っていた刃物で自分の皮膚を傷つけて血を垂らした。根っこは更なる血を求めて、私たちを包もうと土から長く無数に這い出てくる。

「怖がらないで、私と貴女の為。大丈夫、いずれ直ぐに忘れ去られるわ」

一緒に桃源郷に行って、そこで永遠に幸せに暮らす。それだけを望み、土の中に一緒に引きずられる。貴女の悲鳴すら、甘美な音に聞こえる程に貴女に夢中なの。

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