恋 色 .【ワールドトリガー】

19種類の結果パターン

今日のお相手は。 - 2024年5月4日

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ぱたぱたと雨が傘を叩く音だけが聞こえる。


隣のYOUは何も言わなくて、黙っておれの方に傘を傾ける。彼女の肩はそのせいで濡れてしまっていた。

いつもはうるさいくらいに話しかけてくるのに。傘なんて忘れても「ばーか」と言い、折り畳み傘だけ投げて寄越して、一人さっさと帰るようなやつなのに。


今日に限っては、傷心中のおれを気遣ってくれているようだった。


「ほら、着いたよ犬飼」

「んー‥‥‥」

「お腹すいた？ 何か食べる？ あ、飴ならあるよ、ほら」

「いや別に、お腹すいてないし」

「じゃああげない」

「嘘々、ちょーだい」


手渡されたそれを受け取り、「ごめん」とだけ謝った。
案の定YOUは「何のこと？」と聞き返す。


「‥‥‥‥お前、いい奴だな。惚れそう」

「そう？ 別にいいよ、私の隣はいつも空いてるし」

「男つくんないの？」

「つくんないよ。私は犬飼との距離感くらいが一番いいと思ってるし。友達以上、恋人未満」

「‥‥‥そっかぁ。じゃあおれも、これからはそうしようかな」

「誰しも丁度いい距離感があるんですよ。人によって違うけどね。

‥‥‥‥え、待って、何々どうしたの」


YOUの首に手を回して、その肩に頭を乗せた。
はあぁ、と湿っぽいため息をつくと、「よしよし」とまるで子供をあやすように背中を叩いてくる。


「頑張れ頑張れ」

「うわー、泣きそう。無理」

「私の肩はもう濡れてるから気にしないよ」

「お前、ほんとそういうの、‥‥‥‥‥」


一瞬じわりと浮かんだそれは彼女の肩で拭く勇気はなく、指で乱暴に拭った。



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