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今日、貴方と恋をする文豪は...？ - 2024年5月5日

＿宮沢賢治(溜息)＿




「はぁ...」




午後の探偵社。

特に大きな事件もなく、ただただデスクに向かう。だがいつまでも画面と向き合っているのは目が疲れ、無意識に溜息を吐いた。




「どうしたんですか？」




顔を覗き込んできたのは、書類を任せられない賢治だ。無垢な目で心配そうに此方を見ている。




「いや？純粋過ぎる君には判らないだろうけどね、疲れると無意識に出るの」




嫌味ったらしく背もたれに背中を預けながら云う。賢治のことだ、嫌味なんて判らないだろうし、それに長い付き合いだからこんなこと少なくはない。




「へぇ...そうなんですね！」




ほらね、目を輝かせながら感心する賢治を見て、二度目の溜息を堪えてまたデスクに向き直った。


また別の日、新人の女の子が探偵社に入社した。




「...はぁ」


「YOUさん、お疲れですか？」


「...人は時に嬉しい時も溜息を吐くものよ」




ババくさいことを云うような年齢でもない癖に人を語るが、生憎それを咎めるような人はいなかった。

また賢治はそうなんですねと感心する。一度その純粋過ぎる頭の中を見てみたいと思う。




＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿




死にたくない。


また、溜息が口から零れた。この溜息は、何の溜息だろう。




＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿




「...はあー」




目の前の開花したばかりの花を目の前に、態とらしいまでの溜息が賢治から漏れた。




「賢治君が溜息なんて珍しいね、何かあったの？」




白髪の社員が問うた。賢治は自慢するような顔で、社員に向き直る。




「人は時に嬉しい時も溜息を吐くものなんですよ！」

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