寝苦しい夜、如何お過ごしですか？【文スト日替わり】

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おやすみなさい！ - 2024年5月12日

(暑い…)
あまりの寝苦しさに布団から起き上がる。曇っている今夜は、月の光も見えず暗い。

「…?」
誰かの寝息が聞こえる。考え得るのは同居させて貰ってる賢治くんだけど、彼は違う部屋に居る筈だ__

「?!」
私の寝ていた布団の隣に、少し間を空けて敷かれた布団が。その中には、賢治くんが眠っていた。呼吸は少し浅くて、寝顔も一寸辛そう。驚いたけど、彼を起こさない様に息を詰める。きっと仕事で疲れてて、それでこんなことになったんだよねきっと!
時計に目をやると、日付が変わる頃だった。このまま起きて仕事をするには早過ぎる。はて如何しようかと考え込むと、隣から聞こえる寝息が止まった。
ぎぎぎぎ、とぎこちなく振り返ると眠そうに目をこする賢治くんが起き上がっていた。

「あ、YOUさん…すみませんお邪魔してしまって」
「いや、こちらこそ起こしちゃってごめんなさい」
むしろ目が覚めて暫く賢治くんのことにも気づかなかったのだから、謝るのは私の方。
「暑いですね…暑過ぎて起きちゃいました」
「私も。お水飲んで、寝付けるまで本でも読むかなって」
会話の間にも寝乱れた掛け布団をよいしょと整える賢治くん。
「水分補給は大切ですもんね…」
先程から会話にキレが無い。眠いのに暑いしで参ってしまっているのだろうか。…あの賢治くんが? と思っていると、「如何にかなっちゃいそうな暑さです」とこぼす。君が如何にかなるって此れ相当な暑さなんじゃ。
「暑い」と訴える彼の言葉に共感は人一倍込めて適当に相槌を打っていると、まだとろんとした眼のまま賢治くんがすすすと膝歩きで近寄って来た。唐突な行動に疑問符ばかりを浮かべていると、彼はこちらを見上げて云う。

「こんなに暑いなら、むしろ人肌が気持ち良いかも知れません！」

そう云って差し出された腕をそっと触る。成る程、外気よりは体温が低いってことか。
すると賢治くんは「YOUさんの掌、気持ち良いです〜」と目を細めてうりうりと身体をくっ付けて来る。私は人より体温が低めだが、それがこんな形で人の役に立つとは思ってもみなかった。

よしよし、と日に焼けた金髪を撫でてあげるとついには布団の上に座っていた私の腕の中にぽすりと収まる彼。何だこの可愛い生物。賢治くんでしたね知ってた。

私の低めの体温を喜んでくっ付く彼を可愛がっていると、暑さもアトラクションみたいに思えてくる。懐っこい弟が出来た気分だ。暑さが私たちの距離を縮めてくれた様な気がした、そんな熱帯夜の日。

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