淡い恋には涙がつきもの【文スト】［日替わり］

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今日も流す涙は貴方の為に - 2024年5月5日

織田 作之助 【涙の訳を】

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「何故泣いている？」


何時も道理ではない空気が、貴方と私の間に流れるなか、織田作さんに問われた言葉は、あまりにも今の私には残酷すぎた。


「なんで…だと思います？」


狡い。そう微笑めば、織田作さんが何も聞いてこないことなど、判っているのに。


「…話せるときに話せ。あまり溜め込むな。」


優しすぎる。いっそのこと、突き放してくれればいいのに。


其とも…。


「行くのですか。」


「…ああ。」


私の気持ちも、異能力も、これから何が起こるのかも、全て。…全て理解したうえでそのような言葉をかけるのですか？


もしそうなら、貴方は私以上に狡い。


このポートマフィアで、下級構成員という立場で、貴方は力を出さないと私と約束したじゃ無いですか。人を…殺さないと。


なのに、私より先にその約束を破るのですか？


何故わざわざ一度、私の元に会いにきたのですか？


「…YOU。俺は、小説家になりたかった。」


「っなればいいでしょう。どうして、過去形なんですか…！」


頬を伝うものは止まらず、嗚咽がもれる。


困らせたくない、でも行ってほしくもない。


「YOU。」


変わらず優しい声色に思わず顔をあげる。


唇から伝わる熱は、紛れもなく彼のもの。


「行ってくる。」


戻って来ないのでしょう？帰ってこないのでしょう？もう其の声を聞くことが出来ないのでしょう？


現実に引き戻すようにバタンと閉まる扉。


「なんで…なんで動かないのですか！！」


震える自らの足は使い物にならない。


「私の事を知って、判っているのなら、何故接吻(キス)などしたのですか！」


愛したものの未来が見える異能なんて。


残酷だ。この世はいつも。


そして何時か、この唇に残る熱も覚めてしまうのだろう。


「貴方ばっかり、全て知っている。」


私の涙の訳も。

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