愛を伝えてみた――ヒプマイ

7種類の結果パターン

I love you! - 2024年5月6日

「ふー……」


何でもない月曜日の午前。
十一時を過ぎたあたりだから今は三限の数学をやってる頃だな、なんて考えながら俺は煙を吐き出した。

霧散していく煙をぼんやりと眺めていると、どうにもやり切れない気分に襲われる。
俺は一体、何をしているんだろうか。


ーーと、自身が座っているブランコが鎖部分からがしゃんと揺れる感覚を覚えた。


「平日の真っ昼間から学生服着たガキが公園で煙草吸ってんのは感心しねぇな」


あ、と思った時にはもう遅かった。

右手に持っていた煙草を背後から奪われ、反射的に振り返れるとそこには、やけに整った顔を意地悪く歪ませたポリ公ーー入間銃兎が俺から押収したばかりの煙草を咥え佇んでいた。


――っこの野郎。


奪い返そうと伸ばした手は、しかし空を割いただけで、その手をスマートな動作で避けた銃兎は空いていたブランコに腰を落とした。


「おい、何平然と座ってんだよ」

「お前こそこんな時間に何してんだよ。学生の本分は学業に勉めることだろうが」

「はあ？面倒だったからに決まってんだろ」


――ここで時間を潰していればお前に会えるかもしれないと思ったから。


なんていう本音を言えない生意気な俺の口からついて出たのは、非常に可愛げのない言葉だった。


いわゆる“不良”である俺は煙草も吸えば酒も呑む。
学校の無断欠席も息をするようにしていた(今もだが)俺と警官である銃兎の出会いは半年前、同じようにこの公園で煙草を嗜んでいた時だった。


俺と銃兎の年の差は驚異の十一歳である。
こいつにとっては俺なんて生意気なだけの餓鬼で、恋愛対象になるなんて夢のまた夢なんだろうなと思うと複雑だった。
最近の望みはもっぱら“歳をとること”だ。


特に話すこともなくその綺麗な横顔を見つめていると、視線に気付いた銃兎は、ふー、と紫煙を俺の顔に吹きかけてきた。


「っち、何すんだよ」

「あー、これは失敬。私は立派な大人なのでこんな時間から学校サボって堂々と煙草吸ってる餓鬼に構ってる暇なんてないんでした。まあ貴方もお暇でしたら男が相手の顔に煙を吹きかける理由でも調べてみたらどうです？」

「はあ……？」


では、と唐突に立ち去っていった銃兎の背中を見送りつつ、俺は手元にあったスマホで奴の言ってた意味を仕方が無いので調べる。

――男が相手の顔に煙を吹きかけるのは、夜の誘いを仄めかす行為。


「……くそ、愛してる」


俺は恐らく一生奴に適わない。



―fin―

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