私が君を愛すから ２【黒川イザナ】

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何とかシセツに辿り着くことが出来た。




「A！」




『イザナくん。ごめん…びしゃびしゃだ』




酷い風で傘をさす事さえもままならなかったのだ。




「…玄関で待ってろ。タオル持ってくる。」




彼は自分の部屋に戻り、フカフカのタオルをとってきてくれた。




『イザナくんのいいにおいがする…』




「それ本人の前で言う事かよ」




そういえば、私イザナくんに頼ってばかりだ。




今日だって、この前の木下くんの件だって。




本当は“自分の力で何とかしなきゃ”って分かってるけど、何処か頼ってしまう自分がいる…



＿＿＿＿＿＿



「テキトーに座ってよ」




『うん』




とりあえず彼の横に座る。




『イザナくんのお部屋ってお洒落だよね』




「そう？」




『うん。＿＿＿＿＿＿＿＿あ、大きい水槽がある！前まであったっけ？』




部屋には、大きな水槽が置かれていた。水草が水面にキラキラ反射していて綺麗だ。




昔、親によく“生き物を飼いたい！”とおねだりしていたけど、“いつかそのうちね”とはぐらかされていたっけ…




「最近飼い始めたんだけどな。“ベタ”っていう熱帯魚」




『もしかしてイザナくん、意外とカワイイもの好き？』




「ベタが特別枠なだけだし」




確かに、綺麗でお部屋の中を彩ってくれそうだけど…













『…私は特別枠じゃないの？』




もし、小学生の頃話しかけたのが私じゃなくて別の女の子だったら…




イザナくんと私は仲良くなることはないし、その女子と恋仲になっていたのかもしれない。




そんな事を考えては不安になることが時々あった。




「まさか魚に嫉妬するとはな」




『…ごめん』




「謝んなよ」




顎をクイッとされ、そのまま口づけを交わす。




恥ずかしくて、真っすぐと瞳を見つめることが出来ない…




そのうち手を腰に回され、お互いの唇が離れた。




「こんな事、俺がA以外の女子にしたことがある？」




『無い、けど』




「不安になるなよ。お前以外の奴とはこんなに親しくしねーし」




『うん…ありがとう』




…ベタにエサでもやろうかな。




イザナくんとくっついたまま、穏やかな水槽を漠然と見つめていた。

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