坂田優 ページ3
「優君、この間の有栖院財閥のお嬢さん、お嫁さんにどうかな」
「優ちゃん、このお洋服なんか似合うんじゃない?」
「優坊ちゃま、そのようなことしては旦那様に迷惑が」
「優坊ちゃま、好き嫌いは」
「優坊ちゃま、そんなに動き回っては怪我を」
坂田優。坂田財閥の一人息子。
過保護で金持ちな親の元、すくすくと元気な少年に育っていきました。
…なんてことがあるわけがない。あれしちゃダメ。それしちゃダメ。優ちゃんがしていいのはこれだけよ〜って…ふざけんな。俺はお前らの人形じゃない。
好き嫌いをするな、というのは分かる。人に迷惑をかけるのも良くないことだ。でも、あの父親にならいいじゃないか。あいつは俺の事を考えているふりをして、実は金の事しか考えていない。その証拠に。俺は昔、あいつに質問をしてこう返された。
『なんでこんな服着てパーティーに出なあかんの?』
『それはね、お客様によく見てもらうためだよ。この子は将来有望だ、と思ってもらえれば、スポンサーが出来てお金が入って来る。だから、優君はいい子でいるんだよ』
金が入って来るから良い子でいてね。
6歳にして親に失望した瞬間だった。それ以来俺は父親が嫌いだ。母親は自分の趣味を押し付けてくるから嫌いだ。メイドとかは過保護すぎて嫌いだ。俺の好きにさせてくれない。
そんな俺の唯一の暇つぶしの相手になる使用人が、うらさん。
浦田渉。俺より年上。四つくらい。他の召使もみんな年上だが、俺は敬意を払ってないから敬称は付けない。俺がさん呼びをするのはうらさんだけ。うらさんは俺の事をよくわかってくれている。俺が嫌がることはほぼ事前に避けておいてくれるし、話し相手もしてくれる。俺と対等に話してくれるのが、いつも嬉しくて仕方がない。
家以外での話し相手なら、志麻くん。
まーしぃ、とかも呼んだりする。月崎志麻。財閥の息子。俺と同じ境遇で、親同士も上辺だけなら仲がいいから会う機会が多くてよく遊ぶ。似たような悩みの同じ年の子は他にいないので特別仲がいい。
「坊ちゃまって呼ぶの、いい加減やめて?」
_______親のあの嘘が許せない。
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作者名:ちゃそ | 作成日時:2018年11月20日 16時